ブルックナー/メモランダムⅢ⑥ーR.ワーグナー(6)

 舞台神聖祝典劇「パルジファル」はワーグナー最後の大作です。しかし、この物語はなんとも晦渋です。単純化した「あらすじ」は次のとおりです。
 ある王がいて深い傷を負っています。その王を救えるのは「清い心をもった愚者」です。先王は神聖な聖杯と聖槍をもっていましたが、聖槍は悪者に盗まれてしまいます。そこで、主人公たるパルジファルが登場しますが、そう簡単には王を救うことができません。悪者の差し金で、聖女と魔女が一人の人間に同居した(ここは女性の本質を表している、と言われます)絶世の美女があらわれ誘惑されますが、志操正しいパルジファルは落ちません。悪者から聖槍の攻撃を受けますが十字架を切ってこれを凌ぎます。こうして危険を乗り越え、努力を重ねたすえ聖槍を手に入れたパルジファルは王のもとに戻り、聖槍を王に差し出します。不思議なことに王はこれによって快癒し悪者は死にます。いまや愚者ではなく、「聖なる騎士」となったパルジファルは聖杯をかかげて人々を祝福します。
 そう書けば、なあんだということになりますが、愚者パルジファルが聖者になる過程が問題です。動きが極端に少なく饒舌な言葉を語りかける歌手と抽象化された舞台のなかで、この間延々と、主人公の修行ないし解脱のプロセスが展開されますが、忍従の楽劇といってよいでしょう。ゲルマンの血が流れていれば「感覚」的に理解できることが、そうでない民族にとっては不可解な儀式を「言語」と「理念」で解釈しようとする試みに変わります。ましてクリスチャン的な宗教心がない者にとってはなおさらです。
 私は1986年にストックホルムではじめて「体験」しましたが、音楽の美しさは別としてそれ以外の部分は当時、正直に言って全く理解を超えていました。
 
 ワーグナーはパルジファルのバイロイト以外での上演を禁止し、特別な楽劇として「舞台神聖祝典劇」というタイトルをつけました。また、聖金曜日の奇跡を扱う題材であることからその前後に上演されることが多いと言われます。
 ブルックナーはバイロイトでの初演に参列し、結果的にこれがワーグナーとの永久の別れとなります。また、リストの葬儀ではパルジファルの主題によるオルガンの即興演奏を行ったと伝えられています。ブルックナーにとっては、大変関心の高いテーマであったはずであり、それゆえに深く帰依するところがあったかも知れません。
 
(コンサート等の記録)
1986年5月2日 ストックホルム:S.ケラー ストックホルムオペラ
◆ワーグナー パルジファル
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