ブルックナー/メモランダムⅧ⑨ 交響曲第8番

Anton Bruckner: Symphonies 8 & 9
  1. Allegro moderato
  2. Scherzo. Allegro moderato
  3. Adagio. Feierlich langsam, aber nicht schleppend
  4. Finale. Feierlich, nicht schnell

  かって仕事で1週間ほどドイツの小都市ヴィスバーデンに滞在したことがあります。小さな街ですが、中心市街地はコンパクトに美しく整備され、高齢者比率は高いながら、実は裕福な年金生活者が多いと言われ、落ち着いた良い雰囲気な都市だなと思いました。
  しかし、ここの音楽総監督をかのカール・シューリヒトが、1912年から1944年まで30年以上勤めていたことは当時は全く知りませんでした。さらにシューリヒトがウイーン・フィルとの米国ツアーで首席指揮者の大任を果たしその名を世界に知らしめたのは、その後10余年がたった1956年でした。御年なんと76歳です。

  86歳で鬼籍にはいるまで、その後10年。これこそ「大器晩成」の典型ではないでしょうか。フルトヴェングラーやクナッパーツブッシュが、才気溢れ若き日から注目されたのとはだいぶ異なります。また、興味深いのは、チェリビダッケやベームなど年とともに演奏が滔々と遅くなる(細部にこだわり、じっくりと構えて演奏する)指揮者が多いなかにあって、シューリヒトは比較的快速な演奏が多く、かつ、御年を知らなければ、その音楽の瑞々しさから、若手がタクトを振っているのでは・・と錯覚させるような瞬間すらあることです。

 ブルックナーファンにとって嬉しいのは、晩年の録音を含め超名盤の8、9番(ウイーン・フィル)に加えて、3番(ウイーン・フィル)、4番(シュトゥットガルトRso)、5番(ウイーン・フィル)、7番(ハーグ・フィル、ベルリン・フィル、北ドイツSo、シュトゥットガルトRso)とラインナップが結構揃っていることです。

  8、9番はいまも良く聴きますが、プライドが高く何かと小難しいと言われるウイーン・フィルが、大変伸びやかな響きを存分に満たしており素晴らしい快感があります。きっと、この老マエストロとの相性が、とてもいいんだろうな・・とリスナーに感じさせます。しかもダイナミズムも決して過不足ありません。
  フルトヴェングラーの「重量感」やクナッパーツブッシュの「大見得」も好きですが、「今日はシューリヒトの快感を味わいたいな」という日もあります。実にリッチな選択肢が多いというのが、ブルックナーファンならではの贅沢かも知れません。

 さて、シューリヒトと言えば9番でしょう、との評価は承知のうえで、ここでは8番を取り上げます。シューリヒトの8番、おそらくスコアを読み尽くした深い解釈があるのだろう。83歳の老巨匠である、タクトの微妙な振れによる隠された手練れの曲つくりもきっと・・。
 否!です。耳を傾けるとそうした通俗っぽい「思考の夾雑物」を一切合切、洗い流してしまうような演奏です。リスナーの全神経が音楽に知らぬ間に引きよせられていきます。それ以前に、演奏するオーケストラの面々も、もしかしたら同じカタルシスの状況にあるのかも知れないとも感じます。シューリヒトは一途に、只ひたすらに、ブルックナーの音楽空間にリスナーを連れて行ってくれるあたかも音楽の伝道師のようです。
  クナッパーツブッシュを聴くと「桁違い」の音の設計スケールの大きさに驚きますが、シューリヒトの演奏の「至高」とは、例えばアルプスの山稜を遠望しながら清浄な大気を胸一杯吸い込んでいるような幸福感にひたれることではないでしょうか。第3楽章のアダージョを繰り返しかけながら、そう思います。

広告
カテゴリー: 好きな演奏 パーマリンク

コメントを残す

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Twitter 画像

Twitter アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

Google+ フォト

Google+ アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト / 変更 )

%s と連携中