ブルックナー/メモランダムⅨ③ーK.ベーム

  『回想のロンド』から
 
 ベームのブルックナーの録音はどれも素晴らしいものです。そのベームが『回想のロンド』(高辻知義訳 白水社 1970年)でブルックナーについて語っています。以下はその抜粋です。
 
 「≪ヴァグネリアン≫だったわたしは、ブルックナーに対しては最初から親密な関係をもっていた。すでにダルムシュタットで彼の交響曲の多くをわたしは演奏していたが、なんといってもすでにブルックナー組合とブルックナー協会が定着していたドレースデンに来て、わたしはほとんどすべての連続演奏でブルックナーの作品のために尽力した。わたしはそのブルックナー協会の会員になったが、のちにこの会から名誉金メダルを授けられた」(p.93)
 
 「わたしはブルックナーの全交響曲をくり返し演奏してきたが、彼の場合は絶対に原典版で演奏すべきだという意見を持っている。わたしはいろいろな版を、最近のノヴァーク教授の改訂まで含めてできるだけ精密に比較した結果、最新版(原典版:筆者注)が作曲者の希望と意志に合致することを確認した」(p.94)
 
  「・・・ブルックナーのように孤独で独特な存在に対してオーケストラ全体が目標を決めていることこそ決定的なことなのだ。もしも壇上のわれわれみなが納得してさえいれば、われわれは聴衆をも納得させずにはおかないからだ!」(pp.96-97)
 
  特にアメリカ巡演のときのエピソードが面白いです。8番をひっさげての公演に皆は反対しますが、ベームは頑として譲りません。そこでベームはこう考えたといいます。
 「おまえはこの作品で、そして楽団みなの血のなかに流れているウイーン・フィルハーモニーのようなオーケストラで成功を収めずにはおかないのだ」(p.96)
 このあとの締めくくりの言葉として上記の記述が続くわけです。ある意味でベームの凄い自信ですが、それだけ、作品とオケを信頼している証でしょう。原典版の尊重も作曲者の意図への準拠であり、シャルク兄弟の作品のカットなどの改変とオケの編成換えについてもベームは批判しています。
 
 ベームとウイーン・フィルの組み合わせで残されているどの演奏を聴いても、そこにきわめて均質なクオリティを感じるのはこうしたベームの強い意志が背後にあるからなのでしょう。
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