ブルックナー/メモランダムⅩ①ーK.ベーム

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 いままでこの「名指揮者」のシリーズで取り上げてきたのは、1.テンシュテット(Ⅰ⑦:メモランダムの番号を示しています、以下同)、2.チェリビダッケ(Ⅰ⑧)、3.若杉弘(Ⅰ⑨)、4.マズア(Ⅱ①)、5.インバル(Ⅱ②)、6.シノーポリ(Ⅱ③)、7.フルトヴェングラー(Ⅳ④~⑥)、8.ベイヌム(Ⅳ⑦)、9.シューリヒト(Ⅳ⑧)、10.ケンペ(Ⅳ⑨)、11.ショルティ(Ⅴ④)、12.ヨッフム(Ⅴ⑦~⑨)、13.ロジェストヴェンスキー(Ⅵ⑥)、14.セル(Ⅶ②)、15.コンヴィチュニー(Ⅶ④)、16.朝比奈隆(Ⅶ⑤、⑥)、17.レーグナー(Ⅶ⑨)、18.ワルター、クレンペラー、マタチッチ(Ⅸ⑨)の20名です。 今回はカール・ベームについて記します。まず3番については、すでに「好きな演奏」のシリーズで以下のように書きました。

■第3番

 「作曲者の最終稿をベースとしたノヴァーク版(1958年「ブルックナー協会版」)を使用したベーム/ウイーン・フィルの演奏。アインザッツから、これは凄いぞ!と思わせます。1970年の録音ですがウイーン・フィルの瑞々しい音楽が充溢しておりこの年代の録音としては不足はないと思います。
  演奏の「質量」の充実ぶりが本盤の決め手です。フルトヴェングラーやクナッパーツブッシュ時代のように、指揮者とオケが音楽にのめり込んでいく行き方とは異なり、クール・ヘッドな、しかもノー・ミスが前提の演奏ながら、抜群の構築力を誇ります。ベームのこの手法はかってのベルリン・フィルとのブラームスの1番などとも共通し、テンポは一定、それを与件としてダイナミック・レンジは最大限にとります。弦と管のバランスも申し分なし。音に丹念な「入魂」を行うこともベーム流。3番は何故か大家の名演の少ないなか、この1枚は現状まで、おそらくベスト盤といえる出来でしょう。
  ベームが実は周到に準備した演奏でしょうが、彼はこれ以降、この音源をオーバーヘッド(再録音)する必要がなかったと思います。そうした意味では会心の演奏と自己評価していたのではないでしょうか。ベームの代表的なメモリアルであるとともに3番でベームが築いた金字塔とでも言える名演です」。

 4番も実に見事な演奏です。これについては『回想のロンド』を引いての簡潔な印象ですが以下のようにコメントしました。

■第4番

 「ベームの4番は、その求心力ある演奏によって、この曲のスタンダード盤とでもいって良いものです。テンポのコントロールが一定でどっしりとした安定感がある演奏です。
 ベームはその著『回想のロンド』のなかで、「ブルックナーのように孤独で独特な存在に対して、オーケストラ全体が目標を決めていることこそ決定的なことなのだ。もしも壇上のわれわれみなが納得してさえいれば、われわれは聴衆をも納得させずにはおかない」旨を語り、特にウイーン・フィルとの関係では、この点を強調しています。
 ブルックナーにおいて3番、7番、8番とも、ウイーン・フィルとのコンビではこうした強固な意志を感じさせます。同国オーストリア人の気概をもっての魂魄の名演と言えるでしょう」。

 7番はいくつかの音源があれますが、もっとも著名なウイーン・フィルとの76年の録音についての感想(織工Ⅱ/2006.7.27 http://freizeit-jiyuu.blogspot.com/2006_07_01_archive.html)です。

■第7番

 「ヨッフム、セルと7番を聴いてきて、今日はベームを取り出す。もう何度、回したかわからないくらい聴きこんだCDである。注意して耳を澄ます。ベームはいつもながらけっしてテンポを崩さない。安定したテンポこそベームの確たる基本線である。音に重畳的な厚みがある。しかもそれは、一曲におけるどの部分を切り取っても均一性をもっている。オーケストラは十分な質量を出すが、演奏にエモーショナルな感じがしない。制御された質量感と背後に「冷静」さが滲む。そのうえで、弦楽器のパートにおいては音の「明燦」と「陰影」のつけ方が絶妙で、「冷静」でありながらその表情は豊かである。管楽器はおそらく常ならぬ緊張感をもって完璧な音を吹奏し、それは情熱的というより最高度の職人芸を要求されているように感じる。
 厳格なテンポを維持することは、それ自体苦痛であろう。一瞬の緊張感からの開放感もない。これが、ベームの「隠された技法」ではないかと思う。ベームとはメトロノームが内在されている指揮者ではないか。そのうえでさまざまな注文がオーケストラにつく。しかし、このメトロノームの優秀さを知っている人はこれに付いていかないわけにはいかない。指揮者の統率力をこのように感じさせる演奏は稀である。そこが、ベームの凄さではないかと思う」。

 8番についてはHMVのコメント(http://www.hmv.co.jp/product/detail/1414781)を部分引用します。

  「1976年、ウィーン・ムジークフェラインザールにおけるステレオ録音。第7番とともに、ベームがウィーン・フィルとドイツ・グラモフォンにセッション・レコーディングしたブルックナーです。堅固な内声処理や各パートの緻密さはもちろん、強い緊張感を帯びた演奏の気配に、彼のこの曲に対するきわめて真摯な姿勢が感じられます。ノヴァーク版使用」。

 ベームもカラヤンも同じくオーストリア人(もっともカラヤンはギリシア系移民をルーツと純粋の母国人とは言えないとの説もあり)ですが、カラヤンが最晩年までブルックナーの演奏に執着したのに対して、上記各番においても、ベームは再録音には拘らなかった指揮者です。トスカニーニを聴いているとどの曲も彼なりの流儀で、自信をもってスコアに接近している姿が思い浮かびます。ベームも同様です。上記の各曲のコメントは、おそらく全てのベームの録音に共通するものであり、かつその音楽は派手な所作とは無縁ですが、ベーム流の重厚さは一貫しています。

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