ブルックナー/メモランダムⅩ③ークナッパーツブッシュ

クナッパーツブッシュ全集

 
 クナッパーツブッシュという指揮者は、エピソードを読む限り、人間的な魅力に富んでいたようです。ナチスに対してはぎりぎりまで節を曲げずに一定の距離をおきますが、それがゆえに戦時中は「干されて」苦労します。が、戦後は逆に比較的早くから音楽活動を再開することができました。
 練習嫌いでは「名うて」ながら、それがゆえに一回の演奏に燃え上がる「ライブ派」からは、絶対の評価があります。オケも練習に血道をあげて成果がいまいちのうだつの上がらない指揮者に比べ、事前に「楽して」、本番勝負で名演なのですから人気があったこともわかります。

 お顔はどちらかと言えば、魁偉な風貌で取っつきにくい印象ですが、茶目っ気があり気さくな人柄が愛されたとの多くの証言があります。
 フルトヴェングラーと同時代を生きながら、暗い苦闘の時代のマエストロといったパセティックな雰囲気とはほど遠く、結構、人生の楽しみ方を心得ていた達人といったイメージを醸し出してもいます。
 しかし、その音楽の構成力の「桁違い」の大きさや、ズービン・メータをして「ここまで遅くしてもダレない演奏ができるのは、音楽の本質を深く捉えていたからだ」と賛嘆させた、時に超スローな演奏スタイルといい、また、突然の急降下・急上昇ができる戦闘機の高度なパイロットのような(オケの)操縦術といい将に「天衣無縫」な偉丈夫ぶりです。
 
 トスカニーニが抜群の記憶力を誇り、暗譜で指揮することを旨としていたことー実は強度な近眼だった!ーを皮肉って「俺は眼が見えるからね(暗譜はしない)」と言ったとか言わなかったとか・・。しかし、実際は譜面台の総譜を全くめくらなかったとも。面白い人です。
 その明るさがブルックナーの健全な魂ともしかすると共鳴する部分があるのではないでしょうか。これこそが聴き終わったあとのスカッとした爽快感の源泉かも知れません。破顔大笑したチャーミングな表情がジャケットになったり、多くのファンから「クナ」と愛称されたことなども、思わず手元のCDに手を伸ばしてしまう吸引力のなせる技か。私は、周期的に聴きたくなる常連のリスナーです。

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