ブルックナー//メモランダムⅢ⑥ーブルックナー その人物像

  この<シリーズ>ものを続行しよう。中締めで<インデックス>を以下いくつか掲載したので、ちょっと連続性がなくなっているように見えるが、その間、書きためた別のブログからの引用、加筆を中心に「正規軌道」に戻すこととしよう。
 
 ブルックナーといえば、生涯独身の堅物、なかなか芽がでず金にも出世にも辛酸をなめた苦労人、聖地バイロイトになんども足を運んだ類まれなワグネリアン、神経症を患い、自らの作品をいくども手直しした優柔不断な性格といったイメージが強い。しかし、それは実像だろうか?もちろん、史実にもとづくものだから、そうした断片的な「事実」はあるのだろうが、「構成要素」を組み直し、見方をかえると別の人物像も浮かび上がってくるのではないかと思う次第である。

 第1に「生涯独身の堅物」だが、一方で結婚願望が強く、晩年までしつこく、なんども求婚を試みていることは良く知られた伝記である。また、ご婦人とのダンスをこよなく愛したこと(ダンスは水泳とともに得意であった。あの風貌からは想像しにくいことではあるけれども・・・)、大食大飲の食いしん坊、大酒飲み(特にビールが大好きであったと言われる)で宴席では結構ユーモアのセンスもうもっていたこと等の気のおけない人物像への指摘もあり、いわゆる敬虔なるカトリック信者で<戒律にも忠実>な使徒といった堅物ではどうもないようだ。

 第2に「金にも出世にも辛酸をなめた苦労人」という点だが、これは主として若き日から保存されている彼の記した手紙などからのイメージである。しかし、ブルックナーは金銭感覚には鋭敏で、駆け出しの若い頃は別として、リンツ以降は実は、出版費用などの投資資金は別として、金の苦労はそうなかったと思われるし、結果的には相当な遺産も残したこと。また本人は上昇志向が強く、権威・権力欲(といってよいと思うが)からはいつも現状に沸々たる不満はあったろうが、世俗的にみれば大変な成功者であったといってよい。最後の住処はときの宮殿内だったわけだから、モーツァルトのように赤貧のうちに憤死するといったことではない。

 第3に、熱烈なワグネリアンであったことは事実だが、自分で思っているほどにはその音楽はワーグナーとは近くはない(というよりも誰とも異なっているといった方がよいかも知れない)。たとえば、いわゆるライト・モティーフといった一貫性、リスト的な標題性はむしろ希薄で、絶対音楽的な技法では、ゼヒター先生に鍛えられたこともあり、バッハ、ベートーヴェンからの影響のほうがはるかに強いと言われる。

 その一方、伝統的な教会音楽の系譜も厳しく研究し、かつパイプオルガンでは当代きっての即興演奏の名手であった。その交響曲において、オルガンのもつ広大で構築性の強い独自の音楽空間を設計、実現したともいえよう。

 第4に、神経症を患っていたこと、ここはたしかに他人が計り知れない言いしれぬ苦労、懊悩があっただろう。しかし、改訂魔というほどいくども自稿に手をいれることはあっても、これも意外なほど、従前、修正後でその「本質」はかわっていない。堂々巡りといってはなんだが、後世からみて、果たして改訂によって、その音楽が良くなっているのか、その逆かの評価はきわめて難しい。極論すれば、最後はリスナーの感性の問題に帰着するものかもしれない。

 こうみてくると、その人物像をパセティックに見ていいのかどうか・・・とかねがね疑問に思っている。同時代にカウンセリングの精神科医が隣にいたら、本人に向かって、
 「ブルックナー先生、ご自宅は簡素ながら、なかなか良いお暮らしで幸せではないですか。時に、お寂しいかも知れませんが、ご親族も近くにおられ、お弟子さんも熱心ですし人間関係は恵まれておられると思いますよ。そう言えば、ブラームス先生も独身ですし、作曲にご専心されるのであれば、いまの執務環境は煩わしさがなくてかえってよいかも知れませんね。

 食事はともかくお酒は少し控えられたほうがよいかも知れませんね。他方で運動は良いですね。お得意のダンスと水泳は是非、続けて下さい。なんといっても適度な運動は気分転換にもなりますし。でも、若いご婦人にはご注意あれ、いつかもセクハラで訴えられそうになったでしょ。いやいや、先生に限って、もちろんあるまじき誤解でしょうが、男性、そして先生のような高名な方はそうした局面では実に不利ですからね。
 それから先生、そう鬱陶しく考えずに、もっと人生前向きに考えてください。だって、いまやウイーンのみならず、世界的に有名な大作曲家なのですから」
と言ったかも知れないなとひそかに思う。
http://shokkou3.blogspot.com/2008/05/blog-post_26.html
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