ブルックナー//メモランダムⅥ③ ブルックナー演奏論

 まず書いておかねばならないのは、この時代、なにも「売り」にならないCDなど、余程のことがない限り市場にはでないし、「これは傾聴に値する」という音楽批評から、たんなる好悪の別まで、評価のレンジはあるだろうが、概ね、市場にでるすべての演奏は一定の「ボトム・ライン」は超えていると思うことである。

 だが、それはそれとして、ブルックナーに関して言えば、どういう演奏が受け入れられるのかは、このブログでも書いてきたように難しい問題である。以下、時代別傾向を再考してみよう。

1.大家の演奏

 ブルックナーの魅力が<全面開花>したのはそう昔のことではない。作品の校訂に努力したハース(Robert Haas, 1886年8月15日1960年10月4日)やノヴァーク(Leopold Nowak, 1904年8月17日1991年5月27日)などは最近まで活躍した音楽学者であり、ハース版、ノヴァーク版などという演奏スタイルが問題になるのは本当に浅い歴史であることがわかる。だからこそ、少し前まで、「ブルックナー使徒」とでもいうべき大家の演奏は、こうした校訂との関係でも重視される。

 順不同ながら、フルトヴェングラー、クナッパーツブッシュ、ワルター、クレンペラーらは、それ以前のブルックネリアーナ指揮者、ハンス・リヒター(Hans Richter, 1843~1916年)、アルトゥル・ニキシュ(Nikisch Artúr, Arthur Nikisch, 1855~1922年)、カール・ムック(Karl Muck, 1859~1940年)らの系譜をひく大家であり、その演奏は「正統性」の視点からも注目された。これら指揮者の演奏は、「校訂」との関係では、「それ以前」ないし同時期であり、それゆえの自由度があり、ブルックナーの良さを聴衆と共有すべく、いわゆる改竄版の使用や相当大胆なカットや独特の解釈に特徴がある。それが許された鷹揚な時代の演奏とも言えよう。

 異論もあるだろうが、この大家のスタイルが好きなら、それを部分的にでも彷彿とさせる後進グループとして、チェリビダッケ、マタチッチ、シューリヒトらがいるように思う(版を無視しているのではないが、より強い独自のブルックナー解釈が垣間見えるという意味で・・・)。

https://mituhirousui.wordpress.com/2010/05/19/%e3%83%96%e3%83%ab%e3%83%83%e3%82%af%e3%83%8a%e3%83%bc%e3%83%a1%e3%83%a2%e3%83%a9%e3%83%b3%e3%83%80%e3%83%a0%e2%85%a4%e2%91%a6%e3%83%bc%ef%bc%93%e4%ba%ba%e3%81%ae%e5%a4%a7%e6%8c%87%e6%8f%ae%e8%80%85/

https://mituhirousui.wordpress.com/2007/08/15/%e3%83%96%e3%83%ab%e3%83%83%e3%82%af%e3%83%8a%e3%83%bc%e3%83%a1%e3%83%a2%e3%83%a9%e3%83%b3%e3%83%80%e3%83%a0%e2%85%a8%e2%91%a8%e3%83%bcb-%e3%83%af%e3%83%ab%e3%82%bf%e3%83%bc%e3%80%81o-%e3%82%af/

2.「校訂」意識の時代

 第2世代という言い方が果たして妥当かどうかはわからないが、演奏スタイルについて、原典版だの、上記のハース版、ノヴァーク版といった一種のトレーサビリティを意識した演奏の時代を迎える。ヨッフム、ベーム、カラヤン、ヴァント、朝比奈隆、ショルティ、ジュリーニらの演奏は、こうした楽譜研究も一方で踏まえながら、自らの演奏スタイルも加味してブルックナーを取り上げた名指揮者達であろう。ヨッフムはブルックナー協会の会長であったし、カラヤンはハースと親しかった。

 上記の「スター級」に比べると地味ながら、コンビチュニー、アーベントロート、ケンペ、テンシュテット、マズアなどの<ドイツ>派のほかクーベリック、ケルテス、ベイヌムなども味わいある名演を残している。

3.楽譜研究の重視(プロ・スコア派)

 ブルックナー特有の現象だが、楽譜研究が進むなか、一フレーズにいたるまで楽譜を読み解くようなアプローチもでてきた。というようりも最近はそうした傾向がより強まっているが、その点で嚆矢とでもいうべき演奏を披露したのは、シノーポリ、インバル、ロジェストヴェンスキーらであり、プロムシュテット、アーノンクールから最近のシモーネ・ヤングらにいたるまで、この流れは加速化している。ピリオド奏法派も最近、ここに参戦しており話題性はあるが、その一方、ティーレマン、メストらは1,2の「古式」も取り入れていこうという感じもあり、その動向が注目される。

https://mituhirousui.wordpress.com/2006/04/22/%e3%83%96%e3%83%ab%e3%83%83%e3%82%af%e3%83%8a%e3%83%bc%e3%83%a1%e3%83%a2%e3%83%a9%e3%83%b3%e3%83%80%e3%83%a0%e2%85%a1%e2%91%a2%e3%83%bc%ef%bd%87%ef%bc%8e%e3%82%b7%e3%83%8e%e3%83%bc%e3%83%9d%e3%83%aa/

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http://shokkou3.blogspot.com/2008/11/blog-post.html

 さて、今日はシノーポリの8番を聴いている。いかにもシノーポリらしい明解な演奏だが、全番のなかでも勝負どころの8番では、上記にしるした分析型アプローチがより際だっている印象ながら、内燃的な熱っぽさもいつになく感じる。

https://mituhirousui.wordpress.com/2009/12/19/%e3%83%96%e3%83%ab%e3%83%83%e3%82%af%e3%83%8a%e3%83%bc%e3%83%a1%e3%83%a2%e3%83%a9%e3%83%b3%e3%83%80%e3%83%a0%e2%85%a3%e2%91%a4%e3%83%bc%e3%83%96%e3%83%ab%e3%83%83%e3%82%af%e3%83%8a%e3%83%bc%e6%8c%87/

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