ブルックナー//メモランダムⅥ④ インバル再考

Bruckner: Symphonies 0

今回の投稿(Amazon)は以下のとおりです。

 インバルの全集は全般に「初稿」にスポットを当てているほか、9番は未完の第4楽章にも挑戦するなどユニークさに特色がある。その後、「初稿」路線は継承者がつづくという点でその先駆的な取り組みは十分評価できよう。

 以下各番演奏について。00番はめったにかけないが、聴く場合はインバル盤を標準としている。0~2番は特にコメントすべき点なし。1、2番ともいつもはヨッフム、ヴァントを聴く。インバル盤もけっして悪くはないが、両者のブルックナー演奏への熱い思い入れとメローディアスな美しさには及ばない。5~7番も標準的な演奏だが、なかでは6番が見事。6番では、なかなか良い演奏に巡り会わないがこれは素直に心に響く。以下、3,4,8番について。

 「3番」:世界ではじめて初稿(1873年版、ノヴァーク版第1稿)による録音。最近、話題のシモーネ・ヤング&ハンブルク・フィルにいたるまで、ケント・ナガノ、ロジャー・ノリントン、ジョナサン・ノット、ゲオルク・ティントナー、ゲンナジー・ロジェストヴェンスキー、ヨハネス・ヴィルトナー、ヘルベルト・ブロムシュテット、マルクス・ボッシュなどがこの路線を踏襲している。インバルの先駆者としての貢献は大きい。

 「4番」:1874年(初稿:ノヴァークIV/1版)による演奏(これは1975年にクルト・ヴェスが世界初録音した)。この第3楽章はその後、結果的に抹殺されてしまった(ボツになった)音楽でそうした<珍品>が聴けるのが本全集の楽しみのひとつだろう。

 「8番」:遺稿問題が複雑といわれる8番だが、インバルはよく初稿での演奏を行ってくれたと思う。なお、3,4番の初稿と改訂版の非常に大きな乖離に比べると、もちろん違いはあるが8番での違和感の落差は、相対的には小さくなっている。インバルによるノヴァーク版第1稿を用いての初演は、1980年2月29日にフランクフルト・アム・マインにて(1998年7月8日には東京都交響楽団を指揮して日本での初演も)実施。

 最後にフランクフルト放送交響楽団について。現地でもなんどかライヴで聴いたし東京公演にも行った。フランクフルトは、戦後アメリカに統治され米軍基地もあることもあってか、幾分くすんだようなドイツ的な音響ではなく、アメリカのオケのような透明度の高い音を出し、機能主義的な印象が強い。この全集は、そうした特質が前面にでた代表的な記録といえよう。

http://www.amazon.co.jp/Bruckner-Symphonies-0/dp/B003ZJYD92/ref=cm_cr-mr-title

 これ以前、以下のブログを書きました。

 エリアフ・インバル(Eliahu Inbal)は、1936年エルサレム生まれ。ヴァイオリン、作曲、指揮法を学び26歳で「グイード・カンテルリ指揮者コンクール」で1等賞を得て注目されます。1974年にフランクフルト放送交響楽団の首席指揮者に就任、以降、この楽団を世界のスターダムに乗せるべく活動を開始します。  

 ブルックナーのみならず、シューマンやマーラーの交響曲全集を世に問い高い評価を得ます。ブルックナーに関しては、3,4,8番について初稿初録音に挑戦し、世界中のブルックナーファンの度肝を抜くことになります。  

 既に、3番は1946年にカイルベルトが、8番は1973年にシェーンツェラーが、4番は1975年にヴェスが初演をしている(1987年同管弦楽団の初来日の際の「プログラム」での金子建志氏の解説 )とのことですが、インバルはおそらく早くからスコアを研究し、作曲者のオリジナル版への回帰、初稿重視の方針を固めていたようです。  

 わずかな期間ですが、フランクフルトやデュッセルドルフに住んでみて、その都市の個性の違いを実感しました。もともとの連邦制における地域特性の相違はもちろんですが、それに加えて、戦後の連合軍の駐留の影響もあります。フランクフルトは米国、デュッセルドルフはフランスの駐留下に置かれますが、米軍基地の存在もあり、フランクフルトは都市計画ひとつとっても、ドイツにおいては最もアメリカナイズされた都市と言われます。フランクフルト放送交響楽団にもそうした都市の雰囲気が反映されているのか、そのサウンドは北ドイツの重厚な響きとは断然異なります。ドイツのオーケストラのなかでは、透明な、やや軽めで柔らかなサウンドに特色があるように感じました。イスラエル人のインバルは、バーンスタインにその才能を見いだされた一人とのことですが、フランクフルトの常任になっても、この都市の受容能力からは至極、自然に思えます。  東京の初公演ではマーラーを聴きましたが、インバルのブルックナーは全集で楽しんでいます。インバルの現代的な解釈とこのオーケストラのサウンドや自由で機能主義的な演奏スタイルはよくマッチしているように思えます。   

<コンサート記録>

 1987年11月4日:フランクフルト放送交響楽団/サントリーホール

◆ベートーヴェン/交響曲第8番 ◆マーラー/交響曲第1番

https://mituhirousui.wordpress.com/2006/04/22/%e3%83%96%e3%83%ab%e3%83%83%e3%82%af%e3%83%8a%e3%83%bc%e3%83%a1%e3%83%a2%e3%83%a9%e3%83%b3%e3%83%80%e3%83%a0%e2%85%a1%e2%91%a1%e3%83%bc%ef%bd%85%ef%bc%8e%e3%82%a4%e3%83%b3%e3%83%90%e3%83%ab/

その後、各番を聞いての感想を以下、添付しておきます。

http://shokkou3.blogspot.com/2007/08/blog-post_25.html

http://shokkou3.blogspot.com/2007/08/blog-post_29.html

http://shokkou3.blogspot.com/2007/08/blog-post_30.html

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ブルックナー//メモランダムⅥ④ インバル再考 への3件のフィードバック

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