クナッパーツブッシュ  ブルックナー Knappertsbusch Bruckner 2

Symphony 3 / Siegfried Idyll

ブルックナー: 交響曲第3番

1954年の録音(ノヴァーク版第3稿)。いわゆる「大見得を切り、大向こうを唸らせるような」演奏でクナッパーツブッシュ好きなら、<堪らない>節回しである。クナッパーツブッシュは同番についてステレオ録音をふくめ多くの記録を残しているが、1954年盤は珍しくスタジオ収録である。
本盤を聴いていて思うのは、クナッパーツブッシュには一瞬、肩の力を抜いて、「ひらり」と演奏してしまうような軽ろみの美学があり、これが他の指揮者にはないオケの高度な操舵法だろう。クナッパーツブッシュ自身、ブルックナーが好きで、各曲の解釈に絶対の自信をもち、かつ、ある意味、こうしたトリッキーさをご本人はこよなく楽しんで演奏しているような大家の風情がある。
しかも、その一方で、ときにパッショネイト丸出しのように全力ドライブするかと思うと、次に一転、沈着冷静に深い懐で構えたりと変幻自在で一筋縄ではいかない。その<意外性>こそ、この晦渋なる精神を吐露する3番でのクナッパーツブッシュの面目躍如と言えるだろう。

(参考) 3番での別の録音

ブルックナー:交響曲第3番 ニ

Bruckner: Symphony No.4

ブルックナー: 交響曲第4番

1944年9月8日の収録。蚊のなくようなか細いイントロからいかにも録音は貧しいが、無意識に補正して聴けば、演奏は実に立派なもの。なにより表題のとおり、全篇「ロマンティック」な雰囲気に包まれている。
第1楽章アッチェレランドのかけ方が絶妙。第2楽章は比較的遅いイン・テンポ気味で静謐にヴァイオリンが響く。主題の展開が低弦から管楽器に移るにつれ音色は次第に明るくなり音量も自然に増していく。後半の印象的なピチカート部分もキチッと端正な処理。このあたりのクナッパーツブッシュ差配の上手さは格別なもの。第3楽章、冒頭の金管からリズムの振幅が増して、弦楽器の表情が豊かになる。第4楽章、冒頭からふたたびアッチェレランドを強調、オケの音色の陰影はさらに深くなり音楽に没入しているさまがはっきりと看取できる。微妙なニュアンス付けとともにいっそう緊張感を醸成し、極めて迫力あるエンディングを迎える。
改訂版(ノヴァーク版は1953年以降)であること、ライヴゆえの細かなミスも気になるかも知れないが、全体を俯瞰すればまぎれもなく秀逸な名演である。

→ Bruckner: Symphonies 3-5 & 7 での廉価盤購入も一考。

Bruckner: Symphony No. 5

ブルックナー: 交響曲第5番

1956年6月のウイーン・フィル盤 ブルックナー: 交響曲第5番 と基本はかわらないが、1959年3月19日、ホームグランドでのミュンヘン・フィルとの本演奏は「重い大きな尾」を引きずるような響きが全体を支配する。録音のせいもあるかも知れないが、ややざらついた籠った低弦の重量感が前面にでて、時折、金管がそれを鋭く突き抜けてくるが、それ以外の楽器は後景に配置されているかの如く聴こえる。
普通、そのバランス感の悪さは気に障るものだが、クナッパーツブッシュの気合の入ったライヴは、あたかもそれ自身がひとつの流儀であると胸を張っているかのような実在感がある。

第2楽章のテンポの取り方など、緩急の付け方が自在で、クナッパーツブッシュの巧みなタクトとともに、「重い大きな尾」が左右に振れ、あるいは小刻みに震えているような姿を連想する。ここでは木管の優しい響きの味付けがコントラスト上、実に効果的である。第3楽章は、ウイーン・フィル盤での洒落たステップ感は影をひそめ、後半になるにつれ怒涛の進軍のイメージが強い。終楽章のオーケストラの気力の充実ぶりもいかにもライヴならでは。強烈なエンディングではクナッパーツブッシュの凄技を十分に堪能できるだろう。

併録されている「悲劇的序曲」についても一言。録音のせいで一部音がふらつくけれど演奏内容は圧巻。約15分とは思えぬ1曲分の交響曲を聴いたような満腹感がある。

ブルックナー:交響曲第7番

ブルックナー: 交響曲第7番

1949年8月30日、ザルツブルク音楽祭でのライヴ録音。雑音こそすくないものの、収録音域がせまく第4楽章のフィナーレなどもっとよい録音で聴ければなあとの感じをいだくリスナーもいるだろう。しかし、演奏そのものは質は高く一聴に値するものである。

第1楽章、冒頭の短い「原始霧」から第3主題までの長い呈示部で、クナッパーツブッシュは、まるで自然にハミングするように朗々と歌っていく。その抒情性は優しく心地よい。豊かな詠奏は、第2楽章 アダージョのいわゆる「ワーグナーのための葬送」で頂点をむかえ静かな感動を醸成する。

第3楽章のスケルツォは、力感があり明るい曲想に転じるが、この変わり舞台を見るかのような明暗のコントラストのつけ方こそクナッパーツブッシュの自在の技という気がする。第4楽章、コラールふうの旋律で、ふたたび弦のハミングは厚みをもって再開され、いっそうの感情表出ののち、速度を落としてのコーダからブルックナーにしては短い終結部までは、ある意味、すっきりとした運行である。録音の制約からあくまで直観ながら、ライヴ演奏であり、クナッパーツブッシュは、ここではウイーン・フィルらしい柔かく豊かな響きを存分に生かしているのではないかとの想像がはたらく。

(参考)ブルックナー: 交響曲第7番

ブルックナー:交響曲第7番

ブルックナー:交響曲第8番

ブルックナー: 交響曲第8番

本演奏は1955年12月5日、ミュンヘンにてバイエルン国立管を振ってのライヴ盤である。1951年1月のベルリン・フィル盤から1963年1月のミュンヘン・フィル盤まで、クナッパーツブッシュの8番は一貫して1892年改訂稿を使っており、どの演奏も基本線は変わらない。

本盤の録音状況はけっして良くない。咳は我慢するにせよ、音の痩せかたは如何ともしがたく、上記の演奏との比較でも、はじめ第1楽章には不満が残るだろう。ところが、だんだん耳が慣れてくると、ぐいぐいとクナッパーツブッシュの独自の世界に引き込まれていき、録音の悪さに慣れてくる(耳が馴染んでくる)。第3楽章の減速処理ののち、後半は徐々に演奏に熱気が帯びてきて、巨大な建築物を仰ぎ見るような終楽章のコーダでの強奏には心動く。クナッパーツブッシュらしいスケールの大きさである。但し、録音を勘案すれば一般には、ブルックナー:交響曲第8番 が総合的にみて良いだろう。

交響曲第3・4・5・7・8・9番 クナッパーツブッシュ&ミュンヘン・フィル、ウィーン・フィル、ベルリン・フィル(6CD)

【収録情報】
ブルックナー
・交響曲第3番ニ短調 WAB.103
ミュンヘン・フィルハーモニー
録音:1964年1月16日(モノラル/ライヴ)

・交響曲第4番変ホ長調 WAB.104『ロマンティック』
ウィーン・フィルハーモニー
録音:1964年4月12日(モノラル/ライヴ)

・交響曲第5番変ロ長調 WAB.105
ミュンヘン・フィルハーモニー
録音:1959年3月19日(モノラル/ライヴ)

・交響曲第7番ホ長調 WAB.107
ウィーン・フィルハーモニー
録音:1949年8月30日(モノラル/ライヴ)

・交響曲第8番ハ短調 WAB.108
ミュンヘン・フィルハーモニー
録音:1963年1月24日(モノラル/ライヴ)

・交響曲第9番ニ短調 WAB.109
ベルリン・フィルハーモニー
録音:1950年1月30日(モノラル/ライヴ)

ハンス・クナッパーツブッシュ(指揮)

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