ブルックナー 最近聴いているもの

カール・ベーム・コレクション Vol.2 1936-1956 Recordings

カール・ベーム・コレクション Vol.2 1936-1956 Recordings

ベームの古い音源がたくさん出てくるというのは、いまも根強いベーム・ファンの存在を裏付けるものだろう。本集では、モーツァルト、ベートーヴェン、ブラームス、R.シュトラウスなどの魅力的な演目もふくまれているが、小生のお薦めは3曲のブルックナーの交響曲である。

いずれも戦前(第二次大戦終結以前)の古い音源だが、この時代からベームが先駆的、積極的にブルックナーを取り上げていたことがわかるとともに、音の貧弱さを甘受すれば、その演奏の見事さは特筆すべきものと思う。以下に個別の感想を記しているので、ご参考まで。

・ブルックナー:第4番、第5番 Symphonies No. 4 & 5

・ブルックナー:第7番 Bruckner: Symphony No.7

ブルックナー:交響曲第7番

ブルックナー:交響曲第7番

抑揚はあるが透明な響きとともに第1楽章は開始される。低弦と金管は重厚に、ヴァイオリンと木管のメロディはクリアに奏され、これが見事に融合される。色調は暗から明に、悲から喜に、そしてその逆へと変幻自在に変化するが、基本線はしっかりとしているので聴いていて安定感は揺るがない。第2楽章は意外にも恬淡としておりテンポも遅くない。ワーグナーへの葬送音楽というよりも、ブルックナーの代表的な美しきアダージョを、丁寧に力感をもって再現している感がある。

第3楽章 スケルツォは律動感がありそれなりにドラマティックながら終始オーバーヒートはしない抑制のきいた冷静さが滲む。経験のなせる落ち着きだろう。終楽章、第1楽章同様、オーケストラを誘導しつつ旋律の明晰さ、豊かさが際立つ。自然で無理のないテンポ設定、重畳的で素晴らしいハーモニーには、背後に大家の差配を感ぜずにはおかない。全体として、一切思わせぶりのない、堂々とした正攻法のブルックナーである。

➡ The Original Jacket Collection:Bruno Walter Conducts Famous Mahler & Bruckner にて聴取

ブルックナー:交響曲第4番

ブルックナー:交響曲第4番

ワルターの4番ではNBC響との1940年2月10日のライヴ録音 Bruckner<Sym.No.4 もある。これは思いがけず「剛の者」の男性的な突進力ある稀有な記録だが、対して20年後の晩年の本盤は、はるかに緩やかで落ち着きに満ちている。

特に第2楽章の諦観的なメロディの奥深さは感動的で、永年この曲に親しんできた大指揮者自身のあたかも送別の辞を聴いているような感もある。第3楽章「狩のスケルツォ」は軽快だが、中間部では一転テンポを落とし、むしろその後の安息や過去の追想を楽しんでいるかのようだ。終楽章は引き締まった秀演。メロディが流麗で胸に響く一方、終結部ではNBC響盤を彷彿とさせる渾身のタクトも連想させる。

発売後、「ロマンティック」の定番の評価がながく続いたが、今日聴きなおしてみると、オーケストラの統制が折々でやや弱く緊迫感に一瞬空隙があるように感じる。されど、老練な大家らしく過度な強調を一切排除した、安定感ある自然体のブルックナーが好きな向きには、ヴァントや朝比奈隆とも共通し、いまも変わらぬ訴求力があろう。

➡ The Original Jacket Collection:Bruno Walter Conducts Famous Mahler & Bruckner にて聴取

Symphony No.1

Symphony No.1

サヴァリッシュ/バイエルン国立管弦楽団の演奏。ブルックナーの第1番は、ブルックナーがリンツで初演し、その稿である<リンツ版>とその後、ほぼ四半世紀をへて作曲者自身が大きな校正をくわえた<ウイーン版:作曲者晩年の1890/1891年改訂>があります。
サヴァリッシュはリンツ版による演奏で、慣れ親しんだバイエルン国立管弦楽団と息がぴたりを合っていて安定感があります。楽章別の演奏時間が版によって相当違いますが、若きブルックナーの並々ならぬ交響曲への意欲を感じるという意味で私はリンツ版が好きです。サヴァリッシュはブルックナーの交響曲では現状、知られる限りではこのほか3,4,5,6,9番などを録音していますが、特に6番は名演の誉れの高いものです。

サヴァリッシュは、親日家で何度も来日し多くの素晴らしい成果をN響と残してくれましたが、日本では、あまりに人口に膾炙しすぎたせいか、かえって有り難みが薄れていますが、欧州ではまぎれもない「巨匠」です。私は、この1番でサヴァリッシュの端整なアプローチが作品の完成度を少しく高めているようにも感じます。

(参考)
Bruckner: Symphony No. 3 in D Minor
ブルックナー:交響曲第4番変ホ長調「ロマンティック」(ノヴァーク版) Bruckner;Sym No 4
ブルックナー:交響曲第5番@サヴァリッシュ/バイエルン国立o. Symphony 5
Bruckner: Symphony No. 5 in B-Flat Major
ブルックナー:交響曲第6番@サヴァリッシュ/バイエルン国立o. (D) Symphony 6
モーツァルト:交響曲第39番、ブルックナー:交響曲第9番 (Mozart : Symphonie Nr. 39, Bruckner : Symphonie Nr. 9 / Wolfgang Sawallisch, Wiener Philharmoniker) [2CD] Symphony 9

ブルックナー:交響曲第3番ニ短調

ブルックナー:交響曲第3番ニ短調

クナッパーツブッシュが自信をもって取り上げた第3番。練習をしなくともこのメンバーなら大丈夫と言い切ったウィーン・フィルを振っての1960年2月14日のライヴ盤。基本は1954年の旧録とかわらず、クナッパーツブッシュのファンなら、<堪らない>節回し。その一方、1954年盤ではスタジオ収録とは思えない縦横無尽さが身上だが、逆に本盤ではセッション録音さながらの丁寧な処理も垣間見えて、その意外性もまた面白い。

クナッパーツブッシュ流の軽ろみの美学―一瞬、肩の力を抜いて、「ひらり」「はらり」と舞うようなスタイル―はやや抑制され、本盤ではむしろブルックナー演奏を気心の知れたメンバーとじっくりと楽しもうとしているかのようだ。
後半にいくにつれ、ドライブ感も増すが、その一方で、ウィーン・フィルの豊麗なる響き、確かな技量を十分に引き出そうとする深い懐も感じさせる。小生の好みは大見得を切るような旧録ながら音質では本盤に軍配。

ブルックナー:交響曲第4番「ロマンティック」

ブルックナー:交響曲第4番「ロマンティック」

東西ドイツが冷戦で分断されていた1960年代劈頭、西ではカラヤンが帝王の名を手にしていたが、東のいわばチャンピオンがフランツ・コンヴィチュニーであった。ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団楽長、シュターツカペレ・ドレスデン音楽総監督・首席指揮者、ベルリン国立歌劇場音楽総監督という3つの最高ポストについていたのだから、その威光は言うまでもないだろう。
1962年、本格的なステレオ録音時代前に61歳で心臓麻痺で急逝。本盤は1961年、「西側」のウィーン響を振っての「早すぎる」晩年の演奏である。

鷹揚として落ち着いたブルックナーの佳演である。細部に神経がゆきとどき表情は実に豊か(この人の最良の持ち味)ながら、全体では安定した大きなスケール感がある。第2楽章は遅めでテンポ一定、第3楽章は快速で可変的とアクセントの付け方も巧み。客演のウィーン響から見事に生気ある音とライヴさながらの臨場感を引き出している。この時期、リヒテル(カラヤン/ウィーン響 チャイコフスキー:ピアノ協奏曲第1番、他 )を筆頭に東から西への巨匠の客演が外貨稼ぎの目的もあってか盛んに行われたが、コンヴィチュニーもこの金看板を背負った一人であったかも知れない。
真骨頂は終楽章で、熱気を帯び、ブルックナー特有の怒涛のような音の奔流がうねりにうねる。しかもその合間に、主題のメロディは実に慎重に滋味ある響きを奏でる。コンヴィチュニーの力量を知る1枚。

➡ コンヴィチュニー指揮 ブルックナー:交響曲名演集 も参照

ブルックナー:交響曲第6番

ブルックナー:交響曲第6番

ヴァント/ミュンヘン・フィルによる1999年6月24日のライヴ音源。第6番を得意とするヴァントは北ドイツ響を振っての1995年5月15日(ハンブルク)、1996年7月7日(リューベック)でのライヴ盤もあり本曲を積極的に取り上げていたことがわかる。

第6番についてのある種の先入観ー5番と7番の谷間の曲で仄かな明るさが身上(これはベートーヴェンからのアナロジーかも)といった解釈をヴァントはとっていない。色彩的には全般に暗く、5、6、7番には底流で「連続した一貫性」があること、そこをあえて忠実に再現しようとするような解釈を感じる。その姿勢は、奇をてらわず、いつもながら淡々として臨んでおり、ヴァントらしく己は己の道をいくといった気迫も感じる。

細部の丁寧な処理は他番の演奏と変わりないが、第6番では、なかなかしっくりとする演奏に出会わないなかにあって、本盤はあくまでも「ヴァント流」でほかが追随できない高みに上った秀演と言ってよいように思う。ライヴ特有の熱っぽい演奏、そして秘めた意志力が、すべて真率な「音」に転化されていく。そうした「音」束が生き生きと、再現・創造の場でたしかな「運動」をしていると感じるような演奏。名演と思う。

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