セル/シュターツカペレ・ドレスデン 交響曲第3番

ブルックナー: 交響曲第3番ニ短調

1965年8月2日、ザルツブルク祝祭大劇場におけるライヴ音源。注目は、セルがドイツ本場の伝統を守るシュターツカペレ・ドレスデンを振って、彼には珍しいブルックナーを取り上げていること(但し、第3番はクリーヴランド管とのセッション録音もある)。録音は1965年時点ということを考慮しても、音が平板でなんとも残念極まる。これが条件のよいステレオ収録であったら、もっとセルらしい緻密な“音づくり”を味わい感動を呼んだであろう。

それでも妙味はある。シュターツカペレ・ドレスデンは優れたオケだが、やや田舎臭い野趣あふれるところに魅力がある(ブルックナー自体が、そうした傾向をもっている)。それが、セルの手にかかると、第2楽章が典型だが、弦楽器セクションを中心にいかにも洗練された音に変じる。それに折々、迫力ある金管楽器が大きく被さっていく。第3楽章の律動感も楽しめる。音が過度に重くならず、よく整ったアンサンブルからは明朗な響きを引き出している。終楽章も熱演だが、録音のせいもあって、突き抜けるような迫力は感じない。収まり良くまとまっている感じ。シュターツカペレ・ドレスデンの弾けるような強奏をのぞむ向きからはやや物足りなさがあるかも知れない。しかし、アンサンブルが整序され、一瞬もダレない、格調の高さこそセルの持ち味とすれば、本盤もそれは十分に看取できるだろう。

ブルックナー: 交響曲第3番ニ短調

2006

セル(ジョージ)、 ブルックナーCD
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