ブルックナー・ブログにようこそ!

チュエボーなチューボーのクラシック中ブログ から引用

http://blog.goo.ne.jp/hirochan1990/e/ee512fb6eabc747eacb2fa18f9cc1701

下記のカテゴリーからご関心のあるところをご覧ください。古い演奏を好ましく思っているオールド・ファンですが、ブルックナーに少しでも関心をもってもらえたら嬉しく思います。

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ブルックナー 最近聴いているもの

カール・ベーム・コレクション Vol.2 1936-1956 Recordings

カール・ベーム・コレクション Vol.2 1936-1956 Recordings

ベームの古い音源がたくさん出てくるというのは、いまも根強いベーム・ファンの存在を裏付けるものだろう。本集では、モーツァルト、ベートーヴェン、ブラームス、R.シュトラウスなどの魅力的な演目もふくまれているが、小生のお薦めは3曲のブルックナーの交響曲である。

いずれも戦前(第二次大戦終結以前)の古い音源だが、この時代からベームが先駆的、積極的にブルックナーを取り上げていたことがわかるとともに、音の貧弱さを甘受すれば、その演奏の見事さは特筆すべきものと思う。以下に個別の感想を記しているので、ご参考まで。

・ブルックナー:第4番、第5番 Symphonies No. 4 & 5

・ブルックナー:第7番 Bruckner: Symphony No.7

ブルックナー:交響曲第7番

ブルックナー:交響曲第7番

抑揚はあるが透明な響きとともに第1楽章は開始される。低弦と金管は重厚に、ヴァイオリンと木管のメロディはクリアに奏され、これが見事に融合される。色調は暗から明に、悲から喜に、そしてその逆へと変幻自在に変化するが、基本線はしっかりとしているので聴いていて安定感は揺るがない。第2楽章は意外にも恬淡としておりテンポも遅くない。ワーグナーへの葬送音楽というよりも、ブルックナーの代表的な美しきアダージョを、丁寧に力感をもって再現している感がある。

第3楽章 スケルツォは律動感がありそれなりにドラマティックながら終始オーバーヒートはしない抑制のきいた冷静さが滲む。経験のなせる落ち着きだろう。終楽章、第1楽章同様、オーケストラを誘導しつつ旋律の明晰さ、豊かさが際立つ。自然で無理のないテンポ設定、重畳的で素晴らしいハーモニーには、背後に大家の差配を感ぜずにはおかない。全体として、一切思わせぶりのない、堂々とした正攻法のブルックナーである。

➡ The Original Jacket Collection:Bruno Walter Conducts Famous Mahler & Bruckner にて聴取

ブルックナー:交響曲第4番

ブルックナー:交響曲第4番

ワルターの4番ではNBC響との1940年2月10日のライヴ録音 Bruckner<Sym.No.4 もある。これは思いがけず「剛の者」の男性的な突進力ある稀有な記録だが、対して20年後の晩年の本盤は、はるかに緩やかで落ち着きに満ちている。

特に第2楽章の諦観的なメロディの奥深さは感動的で、永年この曲に親しんできた大指揮者自身のあたかも送別の辞を聴いているような感もある。第3楽章「狩のスケルツォ」は軽快だが、中間部では一転テンポを落とし、むしろその後の安息や過去の追想を楽しんでいるかのようだ。終楽章は引き締まった秀演。メロディが流麗で胸に響く一方、終結部ではNBC響盤を彷彿とさせる渾身のタクトも連想させる。

発売後、「ロマンティック」の定番の評価がながく続いたが、今日聴きなおしてみると、オーケストラの統制が折々でやや弱く緊迫感に一瞬空隙があるように感じる。されど、老練な大家らしく過度な強調を一切排除した、安定感ある自然体のブルックナーが好きな向きには、ヴァントや朝比奈隆とも共通し、いまも変わらぬ訴求力があろう。

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Symphony No.1

Symphony No.1

サヴァリッシュ/バイエルン国立管弦楽団の演奏。ブルックナーの第1番は、ブルックナーがリンツで初演し、その稿である<リンツ版>とその後、ほぼ四半世紀をへて作曲者自身が大きな校正をくわえた<ウイーン版:作曲者晩年の1890/1891年改訂>があります。
サヴァリッシュはリンツ版による演奏で、慣れ親しんだバイエルン国立管弦楽団と息がぴたりを合っていて安定感があります。楽章別の演奏時間が版によって相当違いますが、若きブルックナーの並々ならぬ交響曲への意欲を感じるという意味で私はリンツ版が好きです。サヴァリッシュはブルックナーの交響曲では現状、知られる限りではこのほか3,4,5,6,9番などを録音していますが、特に6番は名演の誉れの高いものです。

サヴァリッシュは、親日家で何度も来日し多くの素晴らしい成果をN響と残してくれましたが、日本では、あまりに人口に膾炙しすぎたせいか、かえって有り難みが薄れていますが、欧州ではまぎれもない「巨匠」です。私は、この1番でサヴァリッシュの端整なアプローチが作品の完成度を少しく高めているようにも感じます。

(参考)
Bruckner: Symphony No. 3 in D Minor
ブルックナー:交響曲第4番変ホ長調「ロマンティック」(ノヴァーク版) Bruckner;Sym No 4
ブルックナー:交響曲第5番@サヴァリッシュ/バイエルン国立o. Symphony 5
Bruckner: Symphony No. 5 in B-Flat Major
ブルックナー:交響曲第6番@サヴァリッシュ/バイエルン国立o. (D) Symphony 6
モーツァルト:交響曲第39番、ブルックナー:交響曲第9番 (Mozart : Symphonie Nr. 39, Bruckner : Symphonie Nr. 9 / Wolfgang Sawallisch, Wiener Philharmoniker) [2CD] Symphony 9

ブルックナー:交響曲第3番ニ短調

ブルックナー:交響曲第3番ニ短調

クナッパーツブッシュが自信をもって取り上げた第3番。練習をしなくともこのメンバーなら大丈夫と言い切ったウィーン・フィルを振っての1960年2月14日のライヴ盤。基本は1954年の旧録とかわらず、クナッパーツブッシュのファンなら、<堪らない>節回し。その一方、1954年盤ではスタジオ収録とは思えない縦横無尽さが身上だが、逆に本盤ではセッション録音さながらの丁寧な処理も垣間見えて、その意外性もまた面白い。

クナッパーツブッシュ流の軽ろみの美学―一瞬、肩の力を抜いて、「ひらり」「はらり」と舞うようなスタイル―はやや抑制され、本盤ではむしろブルックナー演奏を気心の知れたメンバーとじっくりと楽しもうとしているかのようだ。
後半にいくにつれ、ドライブ感も増すが、その一方で、ウィーン・フィルの豊麗なる響き、確かな技量を十分に引き出そうとする深い懐も感じさせる。小生の好みは大見得を切るような旧録ながら音質では本盤に軍配。

ブルックナー:交響曲第4番「ロマンティック」

ブルックナー:交響曲第4番「ロマンティック」

東西ドイツが冷戦で分断されていた1960年代劈頭、西ではカラヤンが帝王の名を手にしていたが、東のいわばチャンピオンがフランツ・コンヴィチュニーであった。ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団楽長、シュターツカペレ・ドレスデン音楽総監督・首席指揮者、ベルリン国立歌劇場音楽総監督という3つの最高ポストについていたのだから、その威光は言うまでもないだろう。
1962年、本格的なステレオ録音時代前に61歳で心臓麻痺で急逝。本盤は1961年、「西側」のウィーン響を振っての「早すぎる」晩年の演奏である。

鷹揚として落ち着いたブルックナーの佳演である。細部に神経がゆきとどき表情は実に豊か(この人の最良の持ち味)ながら、全体では安定した大きなスケール感がある。第2楽章は遅めでテンポ一定、第3楽章は快速で可変的とアクセントの付け方も巧み。客演のウィーン響から見事に生気ある音とライヴさながらの臨場感を引き出している。この時期、リヒテル(カラヤン/ウィーン響 チャイコフスキー:ピアノ協奏曲第1番、他 )を筆頭に東から西への巨匠の客演が外貨稼ぎの目的もあってか盛んに行われたが、コンヴィチュニーもこの金看板を背負った一人であったかも知れない。
真骨頂は終楽章で、熱気を帯び、ブルックナー特有の怒涛のような音の奔流がうねりにうねる。しかもその合間に、主題のメロディは実に慎重に滋味ある響きを奏でる。コンヴィチュニーの力量を知る1枚。

➡ コンヴィチュニー指揮 ブルックナー:交響曲名演集 も参照

ブルックナー:交響曲第6番

ブルックナー:交響曲第6番

ヴァント/ミュンヘン・フィルによる1999年6月24日のライヴ音源。第6番を得意とするヴァントは北ドイツ響を振っての1995年5月15日(ハンブルク)、1996年7月7日(リューベック)でのライヴ盤もあり本曲を積極的に取り上げていたことがわかる。

第6番についてのある種の先入観ー5番と7番の谷間の曲で仄かな明るさが身上(これはベートーヴェンからのアナロジーかも)といった解釈をヴァントはとっていない。色彩的には全般に暗く、5、6、7番には底流で「連続した一貫性」があること、そこをあえて忠実に再現しようとするような解釈を感じる。その姿勢は、奇をてらわず、いつもながら淡々として臨んでおり、ヴァントらしく己は己の道をいくといった気迫も感じる。

細部の丁寧な処理は他番の演奏と変わりないが、第6番では、なかなかしっくりとする演奏に出会わないなかにあって、本盤はあくまでも「ヴァント流」でほかが追随できない高みに上った秀演と言ってよいように思う。ライヴ特有の熱っぽい演奏、そして秘めた意志力が、すべて真率な「音」に転化されていく。そうした「音」束が生き生きと、再現・創造の場でたしかな「運動」をしていると感じるような演奏。名演と思う。

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レーグナー ブルックナー Heinz Rögner Bruckner

ブルックナー:交響曲第4、5、6、7、8、9番、ミサ曲第2、3番、テ・デウム、マーラー:交響曲第3番、他 レーグナー(11CD)

【第4番】

1983年7月および1984年11月に収録されたレーグナー/ベルリン放送響による第4番。
ライヴ盤ではなく、また一気呵成に収録されたわけでもない。いわば、ブルックナーの主力・有名曲をどう演奏するかを考えぬいて、あえて2つの特色を際だたせて世に送った。疾駆感とダイナミズムである(本ジャケットの牧歌的な雰囲気とは真逆)。全楽章のさまざまな音楽シーンにおいて、それ以外の要素は後景に引いている。その思い切った解釈をどう評価するかは難しいが、小生はこの疾駆感は、リスナーをけっして飽きさせず面白いと思う一方、原曲の指示は、第1、第3、終楽章ともにくどくも“ nicht zu schnell”(速すぎずに)であり、この速さゆえに複雑なニュアンスが減殺されていないかどうかは気になるところである。

Symphony 4

【第5番】

1983年9月および1984年1月に収録されたレーグナー/ベルリン放送響による第5番。
録音の技法もあるだろうが、ベルリン放送響の重たい低弦と声量の大きな管楽器を存分に押し出し、スケールの大きなブルックナー・ワールドを表現しようとしている。
第4番 Symphony 4 に比べると要所要所で緩急をかなりつけているが全般にはきびきびとした運行。特に駄演だとダレがちの第2楽章では、情感はややうすいが緊張感をうまく持続している。第3楽章は躍動感にみちており明るい表現に好感。折々のおどけたような、はにかんだような表情も可笑しく、こうした機微の濃やかさはレーグナー Symphony 6  の名演に共通するもの。
終楽章は、第3楽章の表現の多様性をもっと展開してほしいところだが、大上段から打ち下ろすような迫力重視。早業の剣技よろしく、むしろ抒情性を封じ込めたような独特な演奏。

Symphony 5

【第6番】

2001年惜しまれて世を去ったハインツ・レーグナーと手兵ベルリン放送響との演奏。レーグナーのブルックナーは3,4,5,7,8,9番やミサ曲の録音もあり得意の演目。東独出身という点ではテンシュテット、マズアなどと共通し、近代的な機能主義とは異なる良きロマンティシズムを感じさせる好演である。1980年6月ベルリン・キリスト教会での録音だが、かってのカラヤン盤がそうであったように残響がながく美しく響き、独特のブルックナーサウンドを形成している。これが6番のもつ抒情性とよくマッチし聴いていて思わずその端麗な音楽に引き込まれる。際だった個性は表にはでないが、演奏の格調は高く魅力的な1枚である。

Symphony 6

【第7番】

1983年5月、8月に収録されたレーグナー/ベルリン放送響による第7番。
出だしが清々しい。磨き込んだ弦楽器の高音域が心に浸みてくる。それに木管のよく訓練された響きがかぶってくる。並々ならぬ気構えを感じさせる第1楽章である。低弦が控えめに寄り添うが、管楽器は己の個性をときに堂々と主張する。レーグナーの場合、こうした展開は応用自在、ブルックナー各番によって異なる。第4番の疾風迅雷にくらぶれば、7番はインテンポ、表情も豊かでとてもオーソドックスに聴こえる。第2楽章前半はもっとテンポを落としてもいいのにと思う。急く必要はない、十分に聴かせる内容と技量があるのになぜ先を急ぐのかといった感じがある。大家のブルックナーが一般に遅くなることへのこれはアンチテーゼであろうか。短い第3楽章は波長がピタリと合っている印象でドライブ感も心地良い。その勢いのまま終楽章も充実した演奏。ベルリン放送響の音が重畳的に整序されて響き、熱き演奏となっている。

ブルックナー:交響曲第7番

【第8番】

1985年、ベルリン放送局大ホールで収録されたレーグナー/ベルリン放送響による第8番。
レーグナーのブルックナ-の交響曲録音は連続して行われている。第4番(第1稿ノヴァーク版)は、1983年7月&1984年11月、第5番(原典版)は、83年9月&84年1月、第6番(原典版)は最も早く80年6月、第7番(ハース版)は83年5月&8月であり、本8番(第1稿ハース版)は85年5月&7月、そして第9番(原典版)は83年2月に収録された。即ち、本盤の収録は他番とは一定の間をおいて「掉尾」としてなされたことがわかる。版も各番によって異なり、そこにレーグナーのブルックナー解釈の考え方が反映されているだろう。

前半2楽章の速さと直線的なダイナミズム、後半2楽章のじっくりと構えたオーソドックスな演奏のコントラストが本盤の最大の特色であろう。ベルリン放送響はよく訓練されブルックナー好きを唸らせるにたる見事なサウンドを提供してくれている(合奏の統一感とその残響が魅力)。

しかし、前半2楽章のときに息せき切るような速さには賛否両論があるだろう。一瞬もダルにさせない追い込み感からこの速度を良しとする見方がある一方、複雑で分析的なブルックナー音楽の妙味(特に集大成の8番において)がこの速度ではいささかなりと減殺されるとの見解もあると思う。

また、後半2楽章ではテンポを緩め、ボキャブラリーを豊富に盛ろうとしているが、前半とのコントラストが強すぎて、やや忍耐を要する。レーグナーのブルックナー解釈には基本的に共感するものの、全4楽章インテンポでも十分に良い演奏なのにと思うのは小生だけであろうか。

ブルックナー:交響曲第8番

【第9番】

◆第9番

1983年2月に収録されたレーグナー/ベルリン放送響による第9番。第1楽章の遠雷が徐々に近づいてくるような出だしは、その複雑な音型と不協和音によって現代音楽の幕開けを連想させる。それが時代を遡るように古典的なメロディに回帰し、さらに両者がその後交差する。この不思議な音楽空間を、遅いテンポのなかでレーグナーはあるがままに周到に浮かび上がらせている。

ブルックナー:交響曲第9番

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【以下は引用、一部抜粋】

ハインツ・レーグナー・ボックス
ブルックナー、マーラー、ワーグナー編

1978~88年ステレオ録音(DISC1&2はデジタル方式)。ドイツの名匠、ハインツ・レーグナー[1929~2001]の交響曲録音を集めたボックス・セット。
ライプツィヒ出身で、ベルリン放送交響楽団の首席指揮者(1973~93)として多くのレコーディングをおこない、その個性的なアプローチが脚光を浴びていたレーグナーは、1984~89年には読売日響の常任指揮者を務めたこともあり、日本でもお馴染みの存在でした。
レーグナーの芸風は個性的なもので、作品の造形的な要素よりは、音楽の表情豊かな移り変わりや音色の濃淡といった要素を重視しており、サラリとした進行と濃厚な味わいという両極端の要素が混然一体となったような演奏は実にユニーク。その独自の魅力は今聴いても実に新鮮で、ときにみせる局所的な巨大スケールではクナッパーツブッシュに、楽想の変換と経過句の凝った処理ではシューリヒトにもなぞらえられたり、さらには異例ともいえる美しい旋律的表現が多用されるなど、まさに予断を許さぬ展開がレーグナーの面白さであります。

ブルックナーの第4番から第9番までの6曲の交響曲は、どれも高い評価を受けているものばかりで、推進力に富む演奏からは生き生きとした魅力が伝わってきます。(HMV)

 

 

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恭賀新年

本年もどうぞよろしくお願いします。

2017年 元旦

 

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ロスバウト ブルックナー

ハンス・ロスバウト  Hans Rosbaud

2014年6月23日にロスバウトについて略歴を中心に上記に書いた。この人は実力に比して、セッション録音の数が極端に少なく、その結果、これまで日本で話題になることがあまりなかった。今日、ライヴを中心に紹介される機会が徐々に増えつつあるが、ブルックナーに限らずマーラーや現代音楽でも、1950年代から先駆的な取り組みを行っており、今後再評価が必要な名指揮者の一人である。今回、改めてブルックナーのBOXを聴きなおして、素直に良い演奏であると思った。

まず全体の印象からだが、ロスバウトはフランクフルト響や南西ドイツ放送交響楽団(含むフライブルク)の初代のシェフである。たまたまドイツ在住地(フライブルク、その後フランクフルト)でお世話になったこうした管弦楽団と所縁のある指揮者だったことを改めて認識する。

ブラームスにせよブルックナーにせよ、ドイツの田舎で自前の管弦楽団で聴く演奏には滋味溢れたいわゆる土着の魅力がある。バンベルク響などはその最たるものであろう。そうした意味ではバーデン・バーデンはドイツ有数の保養地で富裕層も集まりやや異質だが、そこを本拠とする南西ドイツ放送交響楽団には、温浴療法のあとコンサートで心身ともにリフレッシュしたいといった潜在的なニーズは高いだろう。

もちろん富裕な湯治客だって「ここで最高の音楽を!」とまでは期待はしないだろうが、耳のこえたリスナーに満足のいく一定のレヴェルは要求される。

ロスバウトは、現代音楽紹介の第一人者で幅広いレパートリーを誇った手堅き匠であり、ブルックナー演奏にもドイツ内では定評があった。

◆第2番

はじめに初出の第2番(1956年12月10日、13日)について。1877年稿・ハース版を使用。この版による演奏では、コンヴィチュニーやレーグナー(いずれもベルリン放送響)がある。

本盤は録音が悪く音がやせている(特に管楽器が弱い)のだが、弦楽器の響きは比較的きれいに録れている。全体として落ち着いた演奏である。ともすれば平坦な演奏になりがちで、聴かせどころの処理の難しい第2番だが、第2楽章の生き生きとした表現ぶりは好感がもて、細かく気をつかいながら一時も飽きさせない。第4楽章に入るとオーケストラのノリが俄然良くなり、陰影に富み濃淡のはっきりとついた豊かな表現が迫ってくる。これで管楽器の質量があって録音がもう少し良かったら本当に素晴らしいのにと惜しまれる。

◆第5番

次に5番を聴く。野太いブルックナーで骨格線が透視できるような演奏。低弦の厚みある合奏が強調されて全体に重量感がある。

第2楽章はコラール風の親しみやすいメロディよりも、リズムの切れ味のほうが先立つ感じ。音に弛みがない。ヨッフム同様、オーケストラにエネルギーが徐々に蓄積されていくようなブルックナー特有の緊張感が次第に醸成されていく。南西ドイツ放送交響楽団はけっして上手いオケではないが、一徹にブルックナー・サウンドづくりに集中していく様が連想され好感がもてる。

思い切り明るい色調の第3楽章はテンポをあまり動かさず、小細工を用いずに「素」のままのブルックナーの良さを自信をもって提示している。

第4楽章もリズムの切れ味のよさが身上で、フーガ、二重フーガ、逆行フーガといった技法も、リズミックな処理と自然な「うねり」のなかで生き生きと息づく。最強音の広がりは本録音の悪さでは実は十分には把捉はできないのだが、以上の連続のなかでフィナーレの質量の大きさは想像しうるしそれは感動的。ロスバウトの根強いファンがいることに納得する1枚。

◆第7番

これは卓越した演奏である。はじめはなにげなく聴いていたのだが、徐々に引き込まれロスバウトのブルックナーのアプローチに強い魅力を感じた。

沈着冷静にして、細部をゆるがせにしない丹念な演奏である。その一方で、曲想を完全にわがものとしており、その表現ぶりに曖昧さがない。第1楽章の終結部の音量の規則的リニアな増幅の効果、第2楽章アダージョのきらめきを感じさせつつも滔々たる流れ、第3楽章の厳格なテンポのうえでの凛としたスケルツォ(実に気持ちの良い整然さ)、終楽章も小細工なく、ある意味恬淡にキチンとこなしていくが、ニュアンスは豊かでブルックナーらしい律動感が保たれて心地よい。聴き終わったあとの爽快感がひとしおである。

◆第8番

2番、5番、7番と順に聴いてきて最後に8番を手にとる。ロスバウトの演奏の基本は少しも変わらない。沈着冷静に作品を捉え、即物的(ザッハリッヒ)に忠実に再現していく。この人が並々ならぬ熱意をもって、現代音楽の先駆的な紹介者であったことがわかる気がする。おそらく古典であろうと現代音楽であろうと、どの作品に対しても向かう姿勢が一貫し、読譜能力が抜群で、音楽の構成要素を解剖して、それを組み立て直して再現する能力に長けていたのだろう。

しかし、そればかりではない。大指揮者時代を生きたロスバウトの演奏には、音楽の霊感といった技術を超えるものの自覚ももちろんあったと思う。8番ではそれを強く感じさせる。それはブルックナーの8番が宿している「天上と地上の架け橋のような音楽」でこそ顕著にあらわれる。

諦観的、瞑想的な第3楽章ははるかに「天上」を仰ぎ見ているかのようだが、第4楽章は、ふたたび「地上」に舞い戻り、激しくも強靭なブルックナー・ワールドがそこに展開される。好悪を超えて、優れた演奏成果であることはブルックナー・ファンなら誰でも首肯するだろう。現代の若手指揮者にも聴いてほしいブルックナー音楽の真髄に迫ろうとする内容の豊かな演奏である。

以上、日がな一日、ロスバウトを聴いてきて、その丹念な音作り(とモノラル録音での共通点)からベイヌムをまず連想した。一方、分析的ともいえる演奏スタイル(音の分離と融合の見事さ)ではシノーポリのはしりとも言えそうだ。同時代のフルトヴェングラーやクナッパーツブッシュとは明らかに異質であり、シューリヒトやヴァントよりも理知的なスタイルが際立ち、またブルックナーの泰斗ヨッフムよりも演奏仕儀に一定感がある。

一方で、熱情的なブルックナー演奏によって、はじめてブルックナーの受容が進んできた当時にあっては、ドイツでも地方部で活動していたロスバウトは、録音の場も限られ、かつ南西ドイツ放送交響楽団との演奏はいかにも地味にうつったかも知れない。

しかし、この録音集を聴く限り、その解釈には今日的にみても共感をもつことができる。もっと多くのブルックナー音源が世に出ることを期待したい。

ロスバルト、手堅き匠のブルックナー選集

ロスバウト ブルックナー BRUCKNER, A.: Symphonies Nos. 2, 5, 7, 8 (South West German Radio Symphony, Baden-Baden, Hans Rosbaud) (1953-1957)

http://www.naxos.com/person/Hans_Rosbaud/31068.htm

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ブルックナー特集 これが名演

Bruckner: The Symphonies

以下は別ブログ「ブルックナー特集~これが名演」の掲載分です。全4回をまとめてここに書きますが、各回の画像の横のタイトルをクリックするとAmazonの演奏評(織工)に行きます。ご関心のあるものをどうぞ!

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ブルックナーについて、どのオーケストラで聴くかは興味深い話題です。 ブルックナー受容初期において、名門ベルリン・フィル、ウィーン・フィル といえばフルトヴェングラーやクナッパーツブッシュの名前が真っ先に浮か びます。

では、いまもヨーロッパ三大オケの一角、コンセルトヘボウはどうでしょうか。 当時アムステルダム・コンセルトヘボウ(いまはロイヤルに冠がかわっていま す)でブルックナーを積極的に取り上げていたのがベイヌムです。

ベイヌムが築いた伝統は、その後、ヨッフム、ハイティンク、シャイーらに 引き継がれていくわけですから、その功績は大なるものがあります。

→ブルックナー特集 これが名演 その1

http://shokkou3.blogspot.jp/2016/06/blog-post_18.html

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ベルリン・フィルは、フルトヴェングラー、クナッパーツブッシュ後、ブルックナーの録音はヨッフム、カラヤンを中心に行っていきますが、他方、ウィーン・フィルで特定演目ながら、非常な名演を送り出したのがベームです。

もちろん、ブルックナー受容がすすんでくると多くのユニークな演奏もでてきます。オールド派と言っては怒られそうですが、大胆な仕振りで日本でも大変人気のあったマタチッチ、逆にブルックナー解釈に新たな視座をあたえたインバルなど多彩な音源もブルックナーの魅力です。

しかし、新解釈や新校訂に過度にとらわれるのも問題で、たとえば、ラトルの9番の第4楽章などは、あまりに貧弱でゲテモノ的に響き、がっかりした経験もあります。

→ブルックナー特集 これが名演 その2

http://shokkou3.blogspot.jp/2016/06/blog-post_60.html

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ブルックナー演奏で小生が好みなのがシノーポリとテンシュテットです。行き方は大いに違っていて、分析的なシノーポリに対して奔流の如きテンシュテットなのですが、両者ともにブルックナー音楽の本質に迫ろうする姿勢を感じます。中途半端ではなく、確固たる信念をもったスタンスですし、背後にはブルックナーの音楽への深き傾倒もみてとれるような気がします。

ブルックナーに限りませんが、老境にいたっていぶし銀のような名演を残した指揮者も列伝に入っています。シューリヒト、ヴァント、朝比奈隆、スクロヴァチェフスキなどですが、シノーポリは壮年期に急逝し、テンシュテットも晩年は重篤な病気との闘いで思うような活動ができませんでした。

つまり、この2人は老熟というプロセスのない指揮者です。しかし、長生きすれば皆、老熟とも言えません。カラヤンやチェリビダッケの晩年のブルックナーは両指揮者ともに己が芸風の完成を目指しているようなところはありますが、若き日の演奏との比較で、どちらに軍配を上げるべきかは評価がわかれるでしょう。その意味では、シノーポリとテンシュテットの壮年期、円熟期の演奏でのピリオドは惜しまれつつも、一種完結的でよいのかも知れません。

→ブルックナー特集 これが名演 その3

http://shokkou3.blogspot.jp/2016/06/blog-post_55.html

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ブルックナーを聴くならその響きの深さからドイツ(オーストリー)の楽団で、とよく言われますが、それ歴史と伝統をシュターツカペレ・ドレスデンとともに今日継承しているのが、名門ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団です。

そのカペルマイスター(一部はEhrendirigent)の系譜は以下のとおりです。

1895~1922年 アルトゥール・ニキシュ(Arthur Nikisch)

1922~1928年 ヴィルヘルム・フルトヴェングラー(Wilhelm Furtwängler)

1929~1933年 ブルーノ・ワルター(Bruno Walter)

1934~1945年 ヘルマン・アーベントロート(Hermann Abendroth)

1946~1948年 ヘルベルト・アルベルト(Herbert Albert)

1949~1962年 フランツ・コンヴィチュニー(Franz Konwitschny)

1964~1968年 ヴァーツラフ・ノイマン(Václav Neumann)

1970~1996年 クルト・マズア(Kurt Masur)

1998~2005年 ヘルベルト・ブロムシュテット(Herbert Blomstedt)

2005~2016年 リッカルド・シャイー(Riccardo Chailly)

2017年~     アンドリス・ネルソンス(Andris Nelsons)

まるでブルックナー名指揮者一覧とでも言うべきリストです。下記の音源でみても、ノイマンの交響曲第1番、コンヴィチュニーの5番や8番、ブロムシュテットの4番や7番、マズアやシャイーの交響曲集(演奏は他楽団のものもありますが)などは優れた成果です。

→ブルックナー特集 これが名演 その4

http://shokkou3.blogspot.jp/2016/06/blog-post_1.html

 

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アントン・ブルックナー ~ エディション (Anton Bruckner ~ The Collection) (20CD Box)

 

アントン・ブルックナー ~ エディション (Anton Bruckner ~ The Collection) (20CD Box) [輸入盤]

アントン・ブルックナー ~ エディション (Anton Bruckner ~ The Collection) (20CD Box) [輸入盤] 2013

ブルックナーの主要作品をカヴァーした20枚組のボックス。各CDはプラスティック・ケースに入っているが、20枚収納の全体の箱は薄手でとても簡易。

交響曲は、00番、0番はティントナー指揮/ロイヤル・スコティッシュ管、National SO of Ireland、1、2番はゲルト・シャラー指揮/フィルハーモニー・フェスティヴァであり、初期4曲は原典回帰の新演奏(キャラガン校訂譜)で注目されたもの。

3番はテンシュテット指揮/バイエルン放送響、4番はザンデルリンク指揮/バイエルン放送響、5番はヴァント指揮/ベルリン・ドイツ交響楽団、6番はハイティンク指揮/ドレスデン国立、7番はユーリ・アーロノヴィチ指揮/ケルン・ギュルツェニヒ管、8番はティーレマン指揮/ドレスデン国立、9番は、ヴァント指揮/シュトゥットガルト放送響。いずれも定番の「名演」推薦盤からははずれるが、ブルックナーを得意とする指揮者とプロ・ドイツのオケの組み合わせであり野趣あふれるもの。

宗教曲ほかでは、テ・デウムはカラヤンで、ミサ曲集はヘルムート・リリングなどを中心に手堅く固めている。主要なオルガン、ピアノ曲、室内楽曲も所収している。

<交響曲>

・交響曲ヘ短調WAB.99 37’25”

ロイヤル・スコティッシュ・ナショナル管弦楽団ゲオルク・ティントナー(指揮)

収録:1998年9月3&4日/スコットランド、グラスゴー、ヘンリー・ウッド・ホール[NAXOS原盤]

Bruckner: Symphony No. 00, ‘Study Symphony’, Wab 99 / Finale To Symphony No. 4, ‘Volkfest’, Wab 104

Bruckner: Symphony No. 00, 'Study Symphony', Wab 99 / Finale To Symphony No. 4, 'Volkfest', Wab 104

1998年9月3、4日クラスゴーでの収録。重篤な病気をもっていたゲオルク・ティントナーは翌年自殺するが、その予兆を感じさせるようなものは微塵もない。

00番は、スクロヴァチェフスキ、ロジェストヴェンスキーやインバルも全集演奏の一環として取り上げているが、本盤は繰返し部分を省略し演奏時間は37:25と他に比較して短くコンパクトで聴きやすい。

第2楽章のアンダンテでは、牧歌的な魅力をたたえた響きもあるが、全般に「習作」の名のとおり生硬な印象が強く、第4楽章の盛り上がりもあっけなく終わる。しかし、ティントナーの演奏は全体をよく見通してとても丁寧であり好感がもてる。00番ではインバルとともに推賞できるものである。

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・交響曲第0番ニ短調WAB.100 47’35”

アイルランド国立交響楽団ゲオルク・ティントナー(指揮)

収録:1996年9月23&25日/アイルランド、ダブリン、ナショナル・コンサート・ホール[NAXOS原盤]

Symphony 8 (1887 Version) / Symphony 0 Die Nullte CD

Symphony 8 (1887 Version) / Symphony 0 Die Nullte

交響曲第0番 (原典版) アイルランド国立交響楽団と第8番 (ノヴァーク校訂第1版)の組み合わせ。以下は1996年9月23-25日ダブリン録音の前者について。

0番は1、2番よりもむしろ録音が多いくらいだが、意外と随所にブルックナーの魅力の「源泉」を見出すことができる作品。第1楽章の素朴で力強く、しかし変則的なサウンドにはいかにもブルックナーらしさがある。第2楽章のアンダンテは諦観的で美しくブルックナー緩徐楽章のメロディ創造力のさきがけとなっている。短い第3楽章をへて、第4楽章は幼子に優しく語りかけるような序奏からはじまり上昇下降の音形を繰り返すが、伝統的なソナタ形式と現代音楽的な煌きが共存しているように感じる。

ゲオルク・ティントナーの演奏は奇をてらわぬ上記の特色をよくふまえた正攻法のアプローチながら、軽快なテンポと慈しむような歌いこみで好感度が高い。ショルティ盤とともに推賞できるものである。

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・交響曲第1番ハ短調WAB.101(1866年/キャラガン校訂) 51’34”

フィルハーモニー・フェスティヴァゲルト・シャラー(指揮)

収録:2011年7月/エーブラハ、大修道院附属教会(ライヴ)

BRUCKNER, A.: Symphonies Nos. 1-3 (Philharmonie Festiva, Schaller)

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・交響曲第2番ハ短調 WAB.102(1872年/キャラガン校訂)70:21

フィルハーモニー・フェスティヴァ/ ゲルト・シャラー(指揮)

収録:2011年7月/エーブラハ、大修道院附属教会(ライヴ)

BRUCKNER, A.: Symphonies Nos. 1-3 (Philharmonie Festiva, Schaller)

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・交響曲第3番ニ短調 WAB.103(1888-89年/ノーヴァク第3稿)52:10

バイエルン放送交響楽団/クラウス・テンシュテット(指揮)

収録:1976年11月4日/ミュンヘン、(ライヴ)

BRUCKNER: Symphony No. 3 in D Minor

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・交響曲第4番変ホ長調 WAB.104『ロマンティック』(ハース版)71:02

バイエルン放送交響楽団/クルト・ザンデルリング(指揮)

収録:1994年11月4日/ミュンヘン、ヘルクレスザール、(ライヴ)

ブルックナー:交響曲第4番「ロマンティック」

ザンデルリングのブルックナー4番は、「柔よく剛を制す」に似て、角張ったところがなく音楽が緩めのテンポのなか自然に滔々と流れていく印象。一歩間違えば、締りのない弛みにも通じるリスクもあるが、そうならないのは指揮者、オーケストラともにブルックナーの音楽に対する強い愛惜の気持ちが根底にあるからだろう。そこを汲み取れるか否かで本演奏の評価も違ってくる。べームやテンシュテットのような直截の「熱さ」は感じないが、ライヴ盤ながら沈着さが全体を支配し、これはこれで心地よき落ち着いた演奏である。

バイエルン放送交響楽団の<音>はヨッフム時代に鍛えられ、独特の透明感があって聴きやすい。じわりじわりと時間とともにその良さが心に効いてくるような響きである。

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・交響曲第5番変ロ長調 WAB.105(原典版)76:51

ベルリン・ドイツ交響楽団/ギュンター・ヴァント(指揮)

収録:1991年10月6日/ベルリン、コンツェルトハウス、(ライヴ)

交響曲第5番 ヴァント&ベルリン・ドイツ交響楽団

ヴァントのブルックナーの5番には数々の音源がある。早くはケルン放送響の1974年のセッション録音、日本でのN響ライヴ(1979年11月14日、東京、NHKホール)、北ドイツ放送響ライヴ1(1989年10月8日〜10日、ハンブルク、ムジークハレ)、BBC交響楽団ライヴ(1990年9月9日、ロンドン、ロイヤル・アルバート・ホール)、ミュンヘン・フィルライヴ(1995年11月29日&12月1日、ミュンヘン、ガスタイク)、ベルリン・フィルライヴ(1996年1月12-14日、ベルリン、フィルハーモニー)、北ドイツ放送響ライヴ2(1998年7月11日、リューベック、コングレスハレ)などがあるのだから、その音源の多さは群を抜く。根強い人気の裏返しであり5番が十八番であった証左だろう。

小生はこのうち 1974年盤や 1996年盤をよく聴くが、本盤は以下のようにその中間点に位置する1991年の録音。

これが「掘り出しもの」の熱演である。他の演奏にくらべてオケの相対的な弱さを指摘する向きもあるが、技量よりもライヴの高揚感(冒頭から顕著)と集中度に注目すれば見事な演奏である。なにより、ヴァント79才の漲る気力に驚く。朝比奈隆の晩年の耀きを思い出す。両人ともブルックナー指揮者としての堂々たる自負心があればこそか。多少の技術的な瑕疵などは問題にはならないだろう。ヴァントの演奏が好きで、また5番の複雑なる心象に惹かれるリスナーであれば一度は聴いて損のない記録である。

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・交響曲第6番イ長調 WAB.106(ハース版)57:01

シュターツカペレ・ドレスデン/ベルナルド・ハイティンク(指揮)

収録:2003年11月3日/ドレスデン、ゼンパーオーパー(ライヴ)

ブルックナー : 交響曲 第6番 | モーツァルト : 交響曲 第38番 「プラハ」 (Anton Bruckner : Sinfonie Nr.6 | Wolfgang Amadeus Mozart : Sinfonie Nr.38 / Staatskapelle Dresden | Bernard Haitink) [SACDシングルレイヤー] [日本語帯&解説付]

若き頃ハイティンクの指導者はブルックナーの泰斗、ヨッフムであったが、師も名演を紡いだシュターツカペレ・ドレスデンとの組み合わせ。こと6番に関しては、1935年ドレスデンで原典版での初演が行われており、ご当地ならではの強き伝統とプライドもあろう。ヨッフムの遺訓を受継ぎながら、その実、ハイティンクらしい豊かな感受性と変化する表情を備えた堂々とした演奏と思う。

第1楽章はライヴゆえオケとの噛み合いが微妙にずれて金管楽器に不安定なところもあるが、聴かせどころの第2楽章のアダージョは丁寧に歌いこんでとても美しく、第3楽章からは上昇気流に乗ったような高揚感があり、終楽章ではテンポもより自在で感情表出の造詣も深く、終結部のコーダの盛り上がりも十分。

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・交響曲第7番ホ長調 WAB.107(1885年/ノーヴァク版)67:25

ケルン・ギュルツェニヒ管弦楽団/ユーリ・アーロノヴィチ(指揮)

収録:1979年9月6日/ケルン、ドイチュラントフンク(ライヴ)

ブルックナー:交響曲第7番(ケルン・ギュルツェニヒ管/アーロノヴィチ)

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・交響曲第8番ハ短調 WAB.108(ハース版)58:48 / 24:55

シュターツカペレ・ドレスデン/クリスティアーン・ティーレマン(指揮)

収録:2009年9月14日/ドレスデン、ゼンパーオーパー(ライヴ)

BRUCKNER, A.: Symphony No. 8 (Thielemann) (Staatskapelle Dresden Edition, Vol. 31)

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・交響曲第9番ニ短調 WAB.109(原典版)58:04

SWRシュトゥットガルト放送交響楽団/ギュンター・ヴァント(指揮)

収録:1979年6月24日/オットーボイレン、バシリカ聖堂(ライヴ)

交響曲第9番 ヴァント&シュトゥットガルト放送響(1979年 オットーボイレン・ライヴ)

ヴァントのブルックナーの9番には数々の音源がある。ケルン放送響の1979年6月(シュトルベルガー・シュトラーセ・シュトゥディオ、ケルン)でのセッション録音が先行。その後、晩年のライヴ録音も多く、ベルリン・ドイツ交響楽団(1993年3月20日、ベルリン、コンツェルトハウス)、ミュンヘン・フィル(1998年4月21日、ミュンヘン、ガスタイク、フィルハーモニー)、ベルリン・フィル(1998年9月18&20日、ベルリン、フィルハーモニー)、北ドイツ放送交響楽団1(2000年11月13日、東京オペラシティ・コンサートホール)、北ドイツ放送交響楽団2(2001年7月8日、リューベック、コングレスハレ)などがある。

本盤は、ケルン放送響と同時期の1979年、シュトゥットガルト放送響とのライヴ録音である。シュトゥットガルト放送響の演奏は大層充実している。それもそのはず、この時期(1971-79年)、同団ではかのチェリビダッケが君臨し、ブルックナーを集中的に取り上げており徹底的に鍛えられていた時代。本演奏は、比喩的に言えば、高度地域で猛練習してきたマラソン選手が、この日ばかりは低地で伸び伸びと走りこんでいるような雰囲気かも。

一方、ヴァントは好んでシューベルトの「未完成」とこの9番を組み合わせて演奏会を行っているが、両曲ともに胸を張る自信の演目だったのだろう。ヴァント66才の本演奏でもその息吹を強く感じる。さらに、残響のながい教会での収録であることも本盤の特色で、9番の詠嘆的な終曲(第3楽章)は力感にあふれ、かつ心地よき響きである。

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<宗教曲他>

・テ・デウム WAB.45  66:55

レオンティーン・プライス(ソプラノ)

ヒルデ・レッセル=マイダン(メゾ・ソプラノ)

フリッツ・ヴンダーリヒ(テノール)

ヴァルター・ベリー(バス)

フランツ・ザウアー(オルガン)

ウィーン楽友協会合唱団

ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団/ヘルベルト・フォン・カラヤン(指揮)

収録:1960年8月24日/ザルツブルク音楽祭、モノラル(ライヴ)

VERDI, G.: Messa da Requiem / BRUCKNER, A.: Te Deum (Karajan)

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・ミサ曲第2番ホ短調 WAB.27

ヘンリエッテ・ボンデ=ハンゼン(ソプラノ)

イリス・フェルミリオン(アルト)

ミヒャエル・シャーデ(テノール)

アンドレアス・シュミット(バス)

ゲヒンガー・カントライ

シュトゥットガルト・バッハ・コレギウム/ヘルムート・リリング(指揮)

収録:1992年6月/シュトゥットガルト、リーダーハレ、(デジタル/セッション)haenssler原盤

BRUCKNER, A.: Mass No. 2 (Rilling)

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・ミサ曲第3番ヘ短調 WAB.28 71:41

ヴェレナ・シュヴァイツァー(ソプラノ)

エリーザべト・グレイザー(アルト)

ウーヴェ・ハイルマン(テノール)

マティアス・ゲルネ(バス)

ゲヒンガー・カントライ

SWRシュトゥットガルト放送交響楽団/ヘルムート・リリング(指揮)

収録:1992年12月/シュトゥットガルト、リーダーハレ、(デジタル/セッション)

Choral Music - BACH, J.S. / CHERUBINI, L. / BEETHOVEN, L. van / MOZART, W.A. / BRUCKNER, A. / HAYDN, F.J. (Halleluja) (Rilling)

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・ミサ曲ハ長調 WAB.25『ヴィントハーク・ミサ』 (1842)

コルネリア・ヴルコプフ(アルト)

マンフレート・ノイキルヒナー(ホルン)

ウルリヒ・ケルブ(ホルン)

収録:1988年(デジタル/セッション)ARS Produktion原盤

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Bruckner: Requiem, Duruflé: Requiem - A History of Requiem, Part III

・レクィエム ニ短調 WAB.39

エルケ・ヤンセンス(ソプラノ)

ペネロープ・ターナー(メゾ・ソプラノ)

ルール・ヴィレムス(テノール)

アルノー・マルフリート(バス)

ブノワ・メルニエ(オルガン)

ラウダンテス・コンソート/ギィ・ヤンセンス(指揮)

収録:2006年11月11日/ベルギー(デジタル/セッション)Cypres原盤

「レクイエム」といえば、モーツァルト、フォーレ、ヴェルディなどが指折りだが、西洋音楽史では700年の歴史があり、それをギィ・ヤンセンスの指揮によって各世紀単位で収録していこうという斬新な試みの1枚。

ここでは、滅多に取り上げられないブルックナー初期のレクイエムの忠実な再現を古楽器演奏によって行っている。
当時、ブルックナーが小編成でも演奏可能という制約のもとで書いたレクイエムは、全体に敬虔な響きがいかにもオルガン的であり、その即興の妙も感じさせる劇的な展開もある。

【曲目】
1. アントン・ブルックナー: レクィエム(1849)
2. モーリス・デュリュフレ: レクィエム(オルガン伴奏版)
【演奏】
ギィ・ヤンセンス(指揮)、ラウダンテス・コンソート
1)エルケ・ヤンセンス(ソプラノ)、ペネロープ・ターナー(メゾソプラノ)、
ルール・ヴィレムス(テノール)、アルノー・マルフリート(バス)
2)ブノワ・メルニエ(オルガン)
【録音】
1)2006年11月11日 州立ベギイン修道会博物館,シント=トルイデン,ベルギー(ライヴ)
2)2007年6月15日, 9月16日, 10月7日 サンテティエンヌ教会,ブラーヌ=ラユ,ベルギー(ライヴ)

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Bruckner;Missa Solemnis

・ミサ・ソレムニス 変ロ短調 WAB.29 

・詩篇112番 変ロ長調 WAB.35

クリスティアーネ・エルツェ(ソプラノ)

クラウディア・シューベルト(アルト)

イェルク・デュルミュラー(テノール)

ラインハルト・ハーゲン(バス)

バンベルク交響楽団合唱団

バンベルク交響楽団/カール・アントン・リッケンバッハー(指揮)

収録:1990年/バンベルク、クルトゥーアラウム(デジタル/セッション)Virgin/EMI原盤

ブルックナーの「荘厳ミサ」は、1854年聖フローリアンでの教師時代、「上司」の交代の際の祝典用に作曲されたもので、その後、彼の生涯の先生となるジーモン・ゼヒターに入門する際に、その実力をみてもらうために提出されたという逸話のもとで知られる曲。

ブルックナー30才のときの作品であり演奏される機会は稀である。本盤は1940年スイス生まれのカール・アントン・リッケンバッヒャー(Karl Anton Rickenbacher)指揮、ブルックナーを得意とした名匠カイルベルト所縁のバンベルク響および合唱団の演奏。リッケンバッヒャーは広く宗教曲、またブルックナーを主たるレパートリーとしており、2013年には大阪フィルにも来演、交響曲第9番を振っており、その意味では期待される組み合わせである。

作曲の経緯も反映してか、全体に躍動感にあふれ曲想は比較的単純であり聴きやすい。バンベルク響および合唱団の音はプロ・ドイツ的なほの明るく落ち着いた魅力がある。詩篇112(1863年)および詩篇150(1892年)も所収。宗教曲ながらコンパクトで響きが美しいことから、初期ブルックナーに関心のある向きには興味ある1枚だろう。

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・詩篇150番 WAB.38

パメラ・コバーン(ソプラノ)

ゲヒンガー・カントライ

シュトゥットガルト・バッハ・コレギウム/ヘルムート・リリング(指揮)

収録:1996年6月/シュトゥットガルト、リーダーハレ(デジタル/セッション)

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BRUCKNER, A.: Te Deum / Psalm 150 / Mass No. 2 (Stuttgart Gächinger Kantorei, Stuttgart Bach Collegium, Rilling)

・タントゥム・エルゴ (1846)

・アヴェ・マリア (1856)

ドレスデン聖十字架合唱団/マルティン・フレーミヒ(指揮)

収録:1985年/ドレスデン、聖ルカ教会(デジタル/セッション)Capriccio原盤

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ブルックナー・コレクション

・ヘルゴラント WAB.71

ミカエル・ステンバック(テノール)

ダニエル・ヘルシュトレム(バリトン)

ルンド・シンガーズ

マルメ歌劇場管弦楽団/アルベルト・ホルド=ガリード(指揮)

収録:2011年6月/スウェーデン(デジタル/セッション)

Choruses for Male Voices and Orchestra - SIBELIUS, J. / DEBUSSY, D. / STRAUSS, R. / BRUCKNER, A. / SCHUBERT, F. (Lunds Studentsangare)

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『ラテン語によるモテット集』45:56

・パンジェ・リングァ WAB.33

・王の御前に導かれ WAB.1

・王の御旗は翻る WAB.51

・われらがためキリストは死のもとに WAB.10

・この場所は神が造り給う WAB.23

・正しき者の唇は知恵を語る WAB.30

・奉納唱『ダビデを見出し』 WAB.19

・主よ、我を解き放ちたまえ WAB.21

・アヴェ・マリア WAB.6

・愛する者よ、あなたはすべてに美しい WAB.46

・エサイの枝は芽を出し WAB.52

・見よ、大いなる司祭を WAB.13

シュトゥットガルト・フィルハーモニア声楽アンサンブルStuttgart Philharmonia Vocal Ensemble/ハンス・ザノッテリHans Zanotelli(指揮)-

収録:1979年/トンシュトゥーディオ・マウアーマン(アナログ/セッション)CALIG原盤

Latin Motets

ブルックナーのラテン語モテット集( Latin Motets)。以下の12曲が所収されているが、たとえば第7、8曲ではトロンボーンの古式の響きとオルガンの掛け合いが面白く、また第9曲の美しいアヴェ・マリアが楽しめたりと飽きさせない。全体に優しい雰囲気と明るい色調が支配している。

(収録情報:上記再掲)
1. 舌もて語らしめよ WAB 33 Pange lingua, WAB 33 作詞 : Thomas Aquinas 03:53
2. 乙女らは王の御前に導かれ WAB 1  Afferentur regi virgines, WAB 1 作詞 : 旧約聖書 – Bible – Old Testament 01:21
3. 王の旗は翻る WAB 51 Vexilla regis, WAB 51 作詞 : Venantius Fortunatus 05:17
4. われらがためキリストは死のもとに WAB 10 Christus factus est, WAB 10 04:38
5. この場所は神が作り給う WAB 23  Locus iste, WAB 23 02:30
6. 正しき者の唇は知恵を語る WAB 30 Os justi meditabitur, WAB 30 作詞 : 旧約聖書 – Bible – Old Testament 04:51
7. 私は僕ダヴィデを選び WAB 19 Inveni David, WAB 19 作詞 : 旧約聖書 – Bible – Old Testament (トロンボーン) Wolfgang Czelusta, Klaus Bauerle, Peter Redwig , Fritz Resch 01:29
8. 主よ、我を解き放ちたまえ WAB 21 Libera me Domine, WAB 21 作詞 : ミサ典礼文 – Mass Text (オルガン) Manfred Hug 04:11
9. アヴェ・マリア WAB 6 Ave Maria, WAB 6 作詞 : 新約聖書 – Bible – New Testament 03:18
10. 愛する者よ、あなたはすべてに美しい WAB 46 Tota pulchra es, WAB 46 作詞 : 不詳 ‘ Anonymous (テノール)オリー・パーフ – Oly Pfaff (オルガン)Manfred Hug 04:18
11. エサイの枝は芽を出し WAB 52 Virga jesse floruit, WAB 52 作詞 : 不詳 ‘ Anonymous 04:07
12. 見よ、大いなる司祭を WAB 13 Ecce sacerdos magnus, WAB 13 作詞 : 旧約聖書 – Bible – Old Testament (オルガン) Manfred Hug 05:07

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<オルガン曲、ピアノ曲、室内楽>

BRUCKNER, A.: Symphony No. 1 (1866 version) (Vienna Academy Orchestra, Haselbock)

・前奏曲とフーガ ハ短調 WAB.131

・前奏曲ハ長調 WAB.129

マルティン・ハーゼルベック(オルガン)

収録:2005年6月/ウィーン、ホーフブルクカペレ(デジタル/セッション)Capriccio原盤

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『ピアノ曲集』47:21

・ランシエー・カドリーユ

・シュタイアーメルカー

・連弾のためのカドリーユ*

・連弾のための3つの小品*

・ピアノ曲 変ホ長調

・ソナタ楽章 ト短調

・秋の夕べの静かな思い

・幻想曲 ト長調

・思い出 変イ長調

ヴォルフガング・ブルンナー(ピアノ)、ミヒャエル・ショッパー(ピアノ)*

収録:1994年3月21-23日(デジタル/セッション)CPO原盤

BRUCKNER, A.: Collection (The)

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・弦楽五重奏曲ヘ長調 WAB.112 79:33

・間奏曲ニ短調 WAB.113

・弦楽四重奏曲ハ短調 WAB.111

・ロンド ハ短調

ファイン・アーツ四重奏団/ギル・シャロン(ヴィオラ)

収録:2007年9月22-24日/フランス、ブザンソン、サル・ドゥ・パルラマン(デジタル/セッション)NAXOS原盤

BRUCKNER, A.: String Quintet in F Major / Intermezzo in D Minor (Fine Arts Quartet, Hofmann)

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・行進曲 ニ短調 WAB.96

・3つの管弦楽曲 WAB.97

ボン・ベートーヴェン管弦楽団/シュテファン・ブルーニエ(指揮)

収録:2010年5月25-27日/ボン、ベートーヴェンハレ(デジタル/セッション)MDG原盤

BRUCKNER, A.: Collection (The)

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