ヴォルフを聴きはじめたのは15、16歳の頃でした。きっかけは、ドイツリートの名花、エリザベート・シュワルツコップ(Elisabeth Schwarzkopf)のリサイタルです。事前の勉強で上野の東京文化会館の視聴室に通いました。そこでヴォルフ他のリートを集中してレコードで聴きました。訳もわからず聴いていただけで、当時はワグナーやブルックナーとヴォルフの関係など知る由もありませんでした。
しかし、シュワルツコップの2回のコンサートには打たれるような感動がありました。彼女はヴォルフ歌手の第一人者との世評で、聴衆の関心も高く緊張感をもって耳を傾けました。
1回目は、前半はシューベルト、ブラームス、シューマンを歌い、後半は全てヴォルフ。2回目は、前半はハイドン、グルック、モーツアルト、シューマンで、後半にヴォルフ、R.シュトラウスのプログラム・ビルディングでした。ちなみに私は聴いていませんが、東京でのもう一夜の演目(2月10日)は、前半はシューベルト、ワグナー、リスト、レーヴェ、メンデルスゾーンで、後半は2回目と同じく ヴォルフ(<スペイン歌曲集>から※)とR.シュトラウスでした。シュワルツコップの3回の東京公演の特色は、①3夜で一度も同じ歌を取り上げないこと、②必ずヴォルフが入っていること、③全体ではヴォルフの曲が最も多いことでした。
なお、この年にもう一度、ヴォルフをライブで聴きました。リーザ・デラ・カーサ(Lisa Della Casa)のコンサートで、こちらは前半はブラームス、ヴォルフ、マーラー、後半はドヴォルザーク、R.シュトラウスでした。
※<スペイン歌曲集>から
主よ、この大地に生い立つものは
私を花で覆って下さい
ああ、それは五月のことだった
あのひとにいってちょうだい
私の巻髪のかげに
ねえ、あなたですの、立派なお方
<コンサート記録>
1970年1月17日:シュワルツコップ リサイタルから/東京文化会館
◆フーゴ・ヴォルフ
エオリアン・ハープに寄せて
飽くことを知らぬ恋
眠れぬ者の太陽
夜の魔法
ジプシーの娘
<イタリア歌曲集から>
あたしが女王様じゃないっていうのね
ちょっと黙ったらどう、いけすかないおしゃべりさん
あたしの恋人が歌っている
もはや私は乾いたパンを食べることはないでしょう
私の恋人はとてもおチビちゃん
もう平和を締結しましょう
ペンナにあたしの恋人がいる
1970年2月7日:シュワルツコップ リサイタルから/東京文化会館
◆フーゴ・ヴォルフ
つれない娘
心とけた娘
眠っている幼児キリスト
セレナーデ
エピファニアス(主顕祭)
1970年5月2日:リーザ・デラ・カーサ リサイタルから/東京文化会館
◆フーゴ・ヴォルフ
<メルケの詩による歌曲から>
散歩
出会い
つきることのない愛